アプリから事前に注文と支払いを済ませておけば、店頭の端末にQRコードをかざすだけで商品を受け取ることも可能。米国などを中心に広がる新たな購買体験「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」にも対応したかたちだ。このような仕組みを通じて、MOPUでは弁当や惣菜、飲料、お菓子、日用品などさまざまな商品を“完全無人”で提供してきた。

キオスク端末で注文する様子
注文画面の様子

「このロボットを使いたい」スーパーの経営者の声がヒントに

MOPUはRCSのシステムを検証するためのプロトタイプのような位置付けではあったものの、新しい店舗の体験として注目を集め、小売企業の関係者なども視察に訪れた。そんな中でスーパーマーケットの経営者たちの話を聞いたことが、ROMSにとって1つの転機となった。

「(ROMSの技術は)『無人店舗として使うのも面白いが、裏側のピッキングなどの仕組みはネットスーパーのフルフィルメントそのものだよね』と。ネットスーパーでは深夜に稼働できておらず、店舗スタッフが翌朝来た際に注文の入っている商品を一気に集める必要があるため、朝来れるスタッフの人数に応じてオーダー数が決まってしまうのです。この課題を解決するために『夜間帯でもピッキングをし続けられるこのロボットを使いたい』と言われました」(前野氏)

現在展開しているネットスーパー向けの店舗併設型自動倉庫であるNFCは、まさにそのようなニーズに応えるためのものだ。

ピッキングロボットなどのハードウェア自体は既存のメーカーのものだが、そのロボットでどのように商品を認識し、ピッキングをしていくかといった「コントロールシステム」は自社で手がける。

前野氏によると、ロボット単体でピッキング精度を100%に近づけるのは難しく、この精度を高めていくためには周辺機器を含めた自動化を支える設備が欠かせない。「いかにロボットが取りやすい環境を作るか」「ロボットがミスをした場合にどのようにリカバリーするか」といった点から必要になる設備も社内で設計しているという。

そのほか顧客のネットスーパーのインフラやECサイトと接続するためのゲートウェイ、在庫管理などに必要なWMS(倉庫管理システム)なども自社製だ。

また上述したような自動倉庫を支えるテクノロジーに加えて「この仕組みを凝縮して狭小スペースで実現する技術」そのものも日本では大きな差別化要因になりうると前野氏は話す。

「北米ではMFC(Micro-Fulfilment Center)と呼ばれる店舗併設型の自動化設備が広がってきていますが、広大な土地のあるアメリカなどと比べると、日本のスーパーやコンビニはスペースが限られています。結果的に場所がネックとなって(MFCなどの設備を)断念し、狭いスペースで人海戦術で対応するという事業者も多いですが、人手不足が進んでいる中でその体制で継続していくのは難しい。狭小スペースでいかに実現していけるかが小売企業の課題になっています」(前野氏)