また、後者だと、航空業界の脱炭素化に向けて燃費削減のソフトウェアを提供する「NABLA Mobility」。この仕組みはグローバルスケールできる領域の1つだと確信しています。

2050年カーボンニュートラルは、日本発のスタートアップが導く──今、東京都がクリーンテックに投資する理由
インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介氏

出馬:私が着目しているのは、「水素」と「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:CO2を回収・貯留・利用する技術)」ですね。今、世界的に一番ホットな領域だと思います。水素なら、CO2を出さないグリーン水素やターコイズ水素といった分野、CCUSならCO2からプラスチックのような素材やタンパク質を生み出すなどのCO2利用の分野が、今後伸びていくのではないでしょうか。

磯田:個人的にはサーキュラーエコノミー、SaaSなどで草の根的なプロダクトが最終的には効いてくるのではと考えています。一人ひとりの生活や行動が少しずつ変わっていくような取り組みは、今後も必要です。

例えば、不動産の駐車場を最適化したり、中古不動産を再活用したりするスタートアップが広がっていけば、後々ボディーブローのように効果が波及していくのではと期待しています。

東京都が脱炭素スタートアップへ投資する理由

——皆さんが期待されているようなスタートアップのイノベーションを加速させるためには、今後どのような課題があるのでしょうか。

出馬:毎年、クリーンテック分野の専門調査会社である米Cleantech Groupによって、世界の有望なクリーンテック領域のスタートアップ100社(「 Global Cleantech(GCT)100」)が発表されています。その100社のうち6割が北米、3割が欧州+イスラエル、残りがアジアやアフリカという状況ですが、残念ながら日本のスタートアップは、過去に一度も受賞したことはありません。これが非常に問題です。

村田さんもおっしゃっていた通り、今はとても大きなビジネスチャンス。気候変動は新しい経済戦争ですから、ルールを変えて、新事業を興せる機会です。新しい分野でリスクを取りながら進めていくのは大企業にはなかなかできない。やはり主役になるのはスタートアップでしょう。

2050年カーボンニュートラルは、日本発のスタートアップが導く──今、東京都がクリーンテックに投資する理由
東北電力 事業創出部門 アドバイザーの出馬弘昭氏

村田:現在の日本は、新産業を全員で生み出そうというポジティブな流れで、とても良い投資機会となっています。2015年に発足したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の参加企業約3400社のうち、約900社は日本企業。この機に、日本が世界でリーダーシップを発揮しようとしていることが分かる数字ではないでしょうか。