新日本酒紀行「玉乃光」酒蔵外観 Photo by Yohko Yamamoto

伏見で純米酒を復活させて60年、新たに酒粕専門店も

 今の日本酒の純米酒比率は全体の約3分の1だが、太平洋戦争中の日本酒は米不足のため、醸造アルコールや糖類、酸味料などで増量した三倍増醸酒だった。安くできる製法故に戦後も長く続くが、1964年に「神話から続く日本の誇るべき酒は純米酒だ」と無添加清酒の名で純米酒を復活させたのが、玉乃光酒造11代目の宇治田福時さん。しかし当時の酒は級別制度で1級酒が良い酒とされ、2級酒で値段が高い純米酒は敬遠されてしまう。「純米酒は二日酔いしません」をうたい文句に、名刺にも書き添えて伝え、質を求める客から少しずつ支持を得る。

 宇治田さんは原料米にも力を入れ、70年代に岡山県で酒米の雄町が復活すると応援に励み、純米大吟醸を醸した。力強くなめらかな味は看板商品に成長し、今も雄町を最も多く使う。また、有機栽培米のオーガニック日本酒を国内外で販売するほか、地元京都府産の酒米、祝(いわい)と京都で生まれた酵母「京の琴」で酒を醸すなど、さまざまな米の魅力を伝える。