出馬:そもそも日本はスタートアップの絶対数が少ないのが大きな課題なんですよね。クリーンテック領域では欧米の100分の1未満。一方で投資家の分野別ランキングを見ると、北米と欧州は政府・自治体系が中心なのに対し、日本は圧倒的に少ない。スタートアップの育成に国や自治体の資金が、いかに役立つのかが分かる差です。

日本でも国の資金がイノベーションに投じられるようになってきましたが、まだそのほとんどが大企業に回っています。これがスタートアップに投じられるようにならないと、国内でイノベーションを起こすことは難しい。この部分を東京都さんが担うのは非常に良いことだと感じています。

磯田:行政によるファンド投資は、海外に目を向けると当たり前のように行われていますよね。米国や欧州はもちろん、シンガポールのような小国でも国自体がファンドのような形で積極的にスタートアップへ投資をしています。海外に比べると、日本のスタートアップへの投資は非常に少なく、なかなか資金が集まりにくい現状があります。

だからこそ日本においては、生まれたばかりのスタートアップに資金を投じるのは行政の重要な役割だと考えています。行政によるファンド投資と民間ファンドと何が違うのか、とご意見を頂くことがありますが、民間ファンドでは投資することが難しいリスクの高い領域があるのは事実です。そこは行政によるファンド投資が必要になるのです。

今後も2050年カーボンニュートラルを目指すため、そうした意味で積極的にリスクを取り、日本発イノベーションの誕生をバックアップしていきたいですね。

磯田篤岐(いそだ・あつき)◎東京都産業労働局金融部。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、中小企業診断士。外資系投資銀行にて、20年以上、債券やファンドのストラクチャリング業務に従事。その後、政府系官民ファンドを経て、現在は、東京都庁にて国内のベンチャーファンド、プライベートエクイティファンド等を対象とした投資業務に従事。

村田祐介(むらた・ゆうすけ)◎インキュベイトファンド代表パートナー。ネット系スタートアップの投資業務およびファンド組成管理業務に従事した後、2010年にインキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。2015年より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会企画部長を兼務。その他ファンドエコシステム委員会委員長やLPリレーション部会部会長等を歴任。