こうしたIPを生み出す、もしくは押さえるために韓国ではウェブトゥーンスタジオの設立や米国のラディッシュやタパス・メディアを買収するなどの動きが盛んになってきています。IPの権利を獲得できたら、ドラマやグッズなど長い視点でさまざまな展開ができるようになります。また、良いIPは国ごとに違い、それらは世界中に散らばっているので、世界各国の良いIPを獲りに行く動きが加速しているのだと思います。

ようやく日本もウェブトゥーンが盛り上がりを見せていますが、もともと日本は“漫画大国”とも言われており、その領域は昔から強い。ここからグローバルの競争のなかで日本勢が巻き返していく可能性は大いにあると思っています。個人的な肌感覚としては、今のウェブトゥーンの盛り上がりは昔のソーシャルゲームの盛り上がりに近いものがあると思います。ソーシャルゲームに限らず、日本のゲーム産業は国内に止まらず、クロスボーダーで国や地域の垣根を超えてグローバルで躍進した数少ない日本の有力産業の1つです。

今年から来年にかけていくつかの大手IT企業がウェブトゥーンプラットフォームやウェブトゥーンスタジオを立ち上げるという流れが出てくるでしょう。ソーシャルゲームのプラットフォームやアプリを提供する会社の多くは、既存事業との親和性から次なる収益の柱としてウェブトゥーン市場に注目しているところは多いと思います。現に、ソーシャルゲーム大手のアカツキは今年6月に縦読みフルカラーコミックアプリ「HykeComic」をローンチし、人気コミックアプリの一角に食い込みつつあります。

今後、国内勢のプラットフォーム新規参入はしばらく続くと予想しますが、プラットフォームはコンテンツを取り揃えて続々と新規投入し続けていかないと勝負できない構造になっているので、そういう戦い方ができるのはアカツキなどをはじめとする大手IT企業など、多額の資金を投下できる企業に限定されるでしょう。

一方で、LOCKER ROOM、Minto Studio、Plott、TOON CRACKERなど新興のウェブトゥーンスタジオが日本でも続々と立ち上がっています。ウェブトゥーンは現在のところ1作品あたり数千万円のコストが相場です。1作品30話と想定すると、1話あたり50〜80万円の制作費がかかる想定です。

こちらもソーシャルゲーム黎明期〜成長期のように今後プラットフォーム間の競争が激しくなってくるとプラットフォームが有力なスタジオを囲い込んで協業したり、今後5年ほどで新興のスタジオで人気のウェブトゥーン作品を保有するところは大手企業が買収したり資本参加するなどの動きも活発になると思います。