「ヒットしたらグローバル展開しよう」という考えが根付いてしまっているのですが、グローバルでヒットするコンテンツは最初からグローバル展開を想定しています。そうした考え方の違いが、今の韓国と日本のコンテンツ産業の差になっていると思います。

また、韓国は国策としてコンテンツ産業の輸出振興にも力を入れてきました。きっかけとなったのが、1997年のアジア通貨危機に端を発した経済危機です。その翌年に大統領に就任した金大中(キム・デジュン)氏が「文化大統領宣言」をしました。韓国経済を復興させるべく、コンテンツ産業を21世紀における国家の基幹産業の一つとして育成し、同産業を国家戦略として発展させていくための法制度や支援体制作りを進めていったのです。

具体的には1999年に「文化産業振興基本法」を制定し、2003年までに5000億ウォン(1ウォン約99円換算で約498億円)をコンテンツ産業に集中投資する「文化産業振興基金」を設立。2001年に同法は改正され、デジタルコンテンツを政策対象の中心として変更し、コンテンツ産業を専門的に支援するための中心的な政府機関「文化コンテンツ振興院」が設立されました。

また、同年に「コンテンツ・コリアビジョン21」が制定され、デジタルコンテンツ産業の発展を目的に、2003年までにさらに8546億ウォン(同、約819億円)の追加資金の投入を決定するなど、4年間で合計1兆3546億ウォン(約1298億円)の資金が投下されたのです。

こうした大規模な投資のほか、政府がテレビ番組の輸出に向けた再制作(吹き替えや字幕付与など)を支援することで、韓国のコンテンツ産業は大きく成長していきました。

韓国の国内で「コンテンツ産業は稼げる」という認識が定着するようになると、「コンテンツ産業で一旗あげよう」と考える人が増え、コンテンツのつくり手が増える。その結果、良質なエンタメコンテンツの数が増えていく、という良いサイクルが出来上がっていったのです。他にも、韓国は放送法第72条に「外注制作番組の義務」を定めており、放送事業者以外が制作した「外注制作番組」を一定の比率以上で編成しなければいけない、というルールがあったのもコンテンツの制作者を増やし、競争を促す意味では大きかったと思います。

K-POPアーティストが所属する芸能事務所(SMエンターテインメント、YGエンターテインメント、JYPエンターテインメントなど)に所属するアーティストも韓国だけでなく、他国からもスカウトするなど、メンバーの構成もデビュー前からグローバルを意識したものになっており、それも昨今のK-POPブームにつながっていると思います。