「消費者の生活を楽にする」という観点では、資産運用系のサービスも同様に普及していくと見ており、円が弱い状況下で、いかに賢く資産運用するかに関心が集まっていくと思います。後払いサービスなどの一般消費者向け金融サービスが伸びてきたり、生活コストの低い地方への移住を支援するサービスなどが出てくることも十分に考えられます。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

結論から言うと、当社はそれほどネガティブな影響は受けませんでした。景気変動時、起業家として考えなければいけないことは、資本市場とどう向き合うか、顧客市場とどう向き合うかの2点に集約されると思います。当社の場合、前者の資本市場については、まずIT銘柄の株価は全般的に下がっており、プラットフォームビジネスも、かつてのようにPSR(株価売上倍率)ベースで高評価を受けることは難しくなりました。

一方で、M&A仲介の企業群に目を向けると、M&A総合研究所やM&Aキャピタルパートナーズも時価総額1000億円を超えるなど、株価は堅調。M&A領域のプラットフォーム運営企業である当社は、ITスタートアップの中では影響を受けにくい状況にあります。

後者の顧客への向き合い方に関しては、スタートアップM&Aが活発化し、当社の事業運営上は追い風となりました。もともとスタートアップの株価が高騰していた中で、昨秋ごろからIPO価格が急落し、M&Aによるイグジットを選択する経営者が増えてきた流れが背景にあります。岸田政権がスタートアップ支援に注力していることも、スタートアップのM&Aや資金調達支援に強みを持つ当社にとっては歓迎すべき動きといえるでしょう。

五島淳氏 / SHE取締役COO・CMO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

新時代。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

令和4年の今になって、各所から聞こえてきたキーワードのように感じます。良くも悪くも、圧倒的に不確実性の高い一年、当たり前が崩れ去った瞬間を多くのシーンで体感した一年だったことにも、起因してるのではないでしょうか。

起こらないと思われていたウクライナへの軍事進行が勃発し、夏の参議院選挙直前に総理大臣経験者が撃たれて亡くなり、ジャニーズ事務所のKing & Princeのメンバー3人が突然グループの脱退を表明する。多くの人が安心安全で半永続的だと思っていたことへの信頼が、大きく揺らぐことが続きました。