一方で、W杯において若手メンバー中心の日本が強豪国ドイツ・スペインへ勝利し、絶対に再開しないと思われていた伝説的な漫画の連載がスタートするなど、これまで「絶対に無理だ」と思われていた固定観念が、奇跡のように塗り替えられていくことも同時に起きました。

「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」の意味が込められた令和は、何もしなくても安寧を享受できる時代などで決してなく、不確実なカオスを自ら乗りこなすことで、多様性ある新たな文化を勝ち取ることが求められる時代だと思っています。この現実に良くも悪くも多くの人が気づき始めたのではないでしょうか。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

「リスキリング(学び直し)の本格到来」。

ジョブ型雇用への転換やフルリモートなワークスタイルなど、生産性を高める新たな就労観への移行が、世の中的にじわじわ進んできた中での円安・物価高の直撃。より直接的な生活への影響を感じるシーンが増えたことで、いよいよ本格的にキャリアのアップデートやワークスタイル変革の意識が高まってくると考えています。

岸田内閣が個人のリスキリングの支援に、5年間で1兆円を投じると表明したことも追い風となり、ついに本格的なトレンドが来るのではないでしょうか。私たちが展開する女性向けキャリアスクール「SHElikes」もその流れに乗っていきたいと思います。

あらゆる産業でDXを推進し、イノベーションを創発していくにあたり、もっとも重要なのは人材です。特にデジタルやクリエイティブ領域に関わるスキルの装着は、年齢性別問わずますます重要度が高まってくると予想しています。

とはいえ、ネガティブに「リスキリングをしなければならない」といった、やらされムードではきっとうまくいかないのではないでしょうか。不確実な時代だからこそ、新しい概念を恐れず「自ら変革を楽しむ人が格好いい」。そんなポジティブな空気感が生まれることを願っています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

いま振り返っても、資金調達環境はまさに混迷を極めていたと痛感します。当社は先日、幸いなことにシリーズBラウンドの資金調達を完了しましたが、想定以上に時間がかかったことや、企業価値への評価もシビアな環境下だったという事実があります。