浅川:再現性のある成功体験は、アカデミアがビジネスに挑戦する上で確かに重要です。研究とビジネスは通ずるところも多く、課題を見つけてアプローチするという側面では同じです。一方で、研究であれば物理現象など誰も変えられないものが対象となりますが、ビジネスではそこに人がつくった仕組みや感情も含まれる複雑系を解くという点で異なります。

それでも、大学などで起業やスタートアップについて体系的に学べる機会は増えています。私自身も東京大学のアントレプレナーシップの授業で単位を取りながらビジネスについて学びました。全体のシステムを体系的に学べる機会が増えれば、アカデミアの世界からビジネスに挑戦する人も増えるのではないでしょうか。

──最後に今後の展望を聞かせください。

福代:宇宙からデータを取得するための技術開発が世界的に進んでいますが、私たちはその流れと並行して、地球から衛星に脱炭素などの環境に関するデータを飛ばすIoT技術も開発しています。すでに実証実験が進んでおり、2023年から世界各国でさらに実績を積み上げていく予定です。宇宙と地上のインフラを組み合わせることで、人類の新たな可能性を開いていきたいです。

浅川:私たちは水を推進剤とし使用する推進機が、将来的に人工衛星に標準的に搭載されるような世界観を実現したいと思っています。推進機の課題を“過去のもの”とすることで、宇宙開発の未来をさらに一歩進めて行きたいです。

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日本を代表する宇宙開発関連スタートアップとして、その動向に期待が集まるアークエッジ・スペースとPale Blue。共にインキュベイトファンドが運営事業者となり、東京都も出資者のひとりとして名を連ねるファンド事業からバックアップを受けながら成長を続けている。その成長速度を落とすことなく、宇宙開発がカーボンニュートラルの大きな一手になることを期待したい。

福代孝良(ふくよ・たかよし)◎株式会社アークエッジ・スペース代表取締役CEO、東京大学空間情報研究センター特任准教授、内閣府宇宙政策委員会専門委員。東京大学大学院修了。JICA専門家、外務省、内閣府宇宙開発戦略事務局を経て、2018年に株式会社スペースエッジラボ(現株式会社アークエッジ・スペース)創業。アマゾン森林管理および南米における自然資源管理、アフリカ地域の開発問題等を中心に森林・海洋・自然管理等の国際協力業務に実績。内閣府において、アジア・南米・中東・アフリカと宇宙協力並びに宇宙技術を活用したSDGs協力等に携わってきた。現在は、6Uを中心とした衛星コンステレーション構築事業を開始し、コンステレーションを利用した新たな宇宙ビジネスの開拓から、月インフラ構築や深宇宙探査等への取り組みも進めている。