Pale Blue 浅川純(以下、浅川):ロケットによって宇宙に打ち上げられた人工衛星は、切り離されて地球を周り始めます。その際、宇宙空間を自由に動くために推進機(エンジン)が必要となります。Pale Blueでは高圧ガスや有毒な原料ではなく、水を推進剤とする人工衛星搭載用の推進機を開発しています。大学時代から積み上げた研究成果を社会実装するため、私を含めた共同創業者4人で2020年4月に創業しました。

アークエッジ・スペース 福代孝良(以下、福代):アークエッジ・スペースは、3U(10cm×10cm×10cm)〜6U(10cm×20cm×30cm)サイズのキューブサット(小型人工衛星)を開発・運用している会社です。衛星そのものや搭載するペイロード(積荷)の輸送を、従来と比べて圧倒的に安価に実現したいという目標があります。また衛星コンステレーション(中・低軌道に打ち上げた多数の小型非静止衛星を連携させて一体的に運用する人工衛星システム)を形成し、地球観測や通信など幅広い用途に使用できるよう開発・運用を進めています。将来的に地球の周りだけでなく、月や、より遠方の宇宙空間に挑戦したいという動機も、小さくて安価な人工衛星を開発する理由につながっています。

──2人はどのような理由で創業を決心したのでしょうか。起業以前からの課題感なども併せて教えてください。

福代:私は衛星のエンジニアではなく、もともとは南米アマゾンの森林やバイオマスの研究に25年ほど携わっていました。その当時は携帯電話も普及しておらず、森のなかで大きなGPSを抱えて調査を行う日々を過ごしていました。その時に地上のインフラがない場所や未発達なエリアにおいて、人工衛星が非常に役に立つことを実感しました。安価かつ多様な用途に使える人工衛星が増えれば、森林はもちろん、海上や大災害が起きたエリア、また月や火星などにも人類の活動領域を広げていくことができます。

また国際協力分野で活動してきた経験から、宇宙分野の研究者と、環境保護や自然災害の現場に関わる方々との間には、埋めがたい認識の差があることも痛感していました。例えば宇宙研究の現場では、衛星を環境保護に役立てることは必ずしもメインの活用方法ではありません。しかし、環境保護を行う側からすれば、その活用には大きな可能性を秘めている。両者のニーズのミスマッチを解決して、人類により役立つインフラを構築したいというのが創業のきっかけとなりました。