一方的な発信はオンラインでもできるので、全員がリアルに顔を合わせる貴重な機会は、双方向のコミュニケーションをベースに、BitStarグループとしてのカルチャーをつくっていくために使うべきだなと思いました。今後ますます重要になる部分だと思っています。

M&Aに挑戦できるかどうかは、将来の描き方で決まる

及川:M&Aの活用に関心を持つスタートアップも最近は増えてきた一方で、実際にはなかなか踏み切れないものです。BitStarさんはなぜ実行できたのでしょう。

渡邉:当社の事業の核には、「クリエイターエコノミーの活性化を通じて、社会にインパクトを与えたい」という強い想いがあります。創業時から、10年で売上100億円、次の10年で1000億円という大きな目標を掲げており、そのためには毎年30%以上という高い成長率の達成が求められます。そうなると、オーガニックで可能な成長率との差分は、新規事業の創出かM&Aで埋めるしかない。長期ビジョンから逆算したときに、M&Aが必要であることは明白です。

実際、DeNA、サイバーエージェント、ソフトバンクなど、メガベンチャーはみんなコングロマリット化していますよね。特にM&Aは縁次第ですから、機会があれば取り組みたいと考えてきました。

及川:M&Aをやり始めたころは、どんなフェーズだったのでしょう。すでに黒字化している事業もあり複数事業化も軌道に乗ってきた、といったところでしょうか。

渡邉:軌道に乗るところまでは至っていませんでしたね。当社の事業は、広告エージェント事業以外はすべて、短期で収益化するのが難しいものばかりなんです。ただ、長期的にクリエイターやクライアント企業から選ばれる存在になるためには、今は隣接領域に張っていくことが必要な時期だと。

マネジメント事業など、立ち上げ時は僕らが学ぶ立場でもあるのでマージンなしでやっていましたから。赤字を掘りつつ、将来の成功を信じて基盤をつくっている時期でした。

及川:その段階でM&Aを実行したのは、本当にすごい。仕組み化を追求する論理性の裏には、熱いロマンをお持ちなんですね。昨今、スタートアップにとって厳しい市況が続いていますが、IPOについてはどうお考えですか。

渡邉:BitStarとしてIPOをどう位置付けるか、ここはかなり社内で議論を重ね、考え方を整理してきました。結論、当社が売上100億円、1000億円レベルの企業になるために、IPOは1つの選択肢だと。