会社の業績が期待通りに伸びていけば、給与やインセンティブの交渉はジョイン後でも十分可能なはずです。当社の場合も、優秀な経営者には当然グループに残っていただきたいですから、報酬面は状況に応じて、柔軟に検討していきたいと考えています。

一方、経営者が事業を離れることを希望している場合、買い手から高い評価を得るためには、やはり足元でしっかり利益を出しておくことが大切です。たまに売り手の方から、「バリュエーションは前回ラウンドの際と同じでお願いします」と言われるケースがあるのですが……。

及川:それは無理ですよね。「自分たちがいくらで売りたいか」ではなく、「自社を取得することで、相手はどれだけの利益が見込めるか」という視点がないと、そもそも交渉にならないです。BitStarさんは、今後どんなM&Aをしていきたいとお考えですか?

渡邉:当社はエンタメ業界の中でも、テクノロジーやデータベースの蓄積・活用によってベストプラクティスを見いだすことに強みを持っています。また、先ほど触れたように、事業成長を実現するための仕組みづくりや複数事業によるシナジー創出も得意分野です。こうしたノウハウを今後も磨きアピールしていくことで、一緒にビジョンを実現したいと思える仲間を増やしていきたいです。

将来的には、事業領域的に超飛び地の企業を買うとか、小が大を買うようなM&Aにもチャレンジしてみたいと考えています。キューサイを買ったユーグレナのケース、コールマンを買ったビザスクのケースなど、学びが多いですね。

エンタメ業界は中小規模のプレイヤーの多い分散市場であり、かつ変化のスピードの速い領域ですから、強いプラットフォーマーになるためには、M&Aは非常に有効な手段です。社内で新規事業を生み出す力ももちろん高めつつ、自社の取り組みの延長線上にない事業については大胆なM&Aで取り込み、バリューにも掲げている「突き抜ける。」存在を目指し続けます。