「過熱蒸煎機の導入によって食品パウダーの製造や販売ができれば、今までコストをかけて廃棄してきたものが、収益を生み出すようになります。食品メーカー側もSDGsの取り組みをしたいというニーズが高まっている状況です。パウダーを商品開発に活かしていただくことで、食品ざんさが魅力的な商品に変わり、消費者に届いていくという流れを作れる。このような循環型のフードサイクルを構築し、かくれフードロスを解決していきたいと考えてます」(加納氏)

ASTRA FOOD PLANでは2022年9月に自社のラボを開設し、複数の企業と過熱蒸煎テストを実施してきた。

テストは有料だが、問い合わせが多く、試した食材は100品目を超えた。人参の皮やキャベツの芯、白菜の外葉といった野菜の端材を始め、コーヒーかすや茶かすなどの飲料ざんさ、卵殻など、さまざまなかくれフードロスに有効活用できる余地があるという。

食品ざんさのイメージ
食品ざんさのイメージ

父の約20年間の研究を受け継ぎ起業

ASTRA FOOD PLANは3年前に創業されたスタートアップだが、同社のコアである過熱水蒸気技術は、加納氏の父・加納勉氏が約20年間におよび研究してきたものだ。

勉氏はもともとセブンイレブンジャパンの常務取締役だったが、加納氏が子供だった頃に交わした親子の会話が、1つの転機となった。

「学校で『添加物がたくさん含まれているコンビニ食は食べないほうが良い』と教わったことを父に伝えると、大変ショックを受けてしまって。もっと安全にお弁当を作る技術はないかと本気で探し始めた結果、当時はまだ注目されていなかった過熱水蒸気技術を発見したんです。最終的にはこの技術で過熱蒸気調理器を作ると意気込んで、会社を辞めてしまいました」(加納氏)

過熱水蒸気を調理に用いれば、食品の劣化が抑えられる。この技術を用いた調理器によって酸化防止剤がいらない弁当や、着色料が不要な健康的な食品を実現できないか──。

勉氏は約20年にわたって、過熱水蒸気技術を軸とした事業をいくつも模索したが、ビジネスとしてはなかなか大きな成果に繋がらなかった。

「父の事業にかける思いを尊敬していた」と話す加納氏は、食品メーカーなどで働いた後、父親の会社を手伝うようになる。

「ゆくゆくは自分が会社を継ごうと考えていたのですが、(事業がうまくいかず)継ぐつもりだった会社自体がなくなってしまったんです。ここまでやってきたことが途絶えてしまうのはもったいないと感じていたので、父の知見や思いを受け継ぎ、世代交代をするようなかたちで新しく立ち上げたのが、今の会社です」(加納氏)