「乾燥するより、廃棄した方が安い」を覆す
かくれフードロスの課題は、吉野家に限らずさまざまな食品メーカーや飲食店が抱えているものだ。
それでもかくれフードロスの有効活用はなかなか進んでこなかった。その大きな原因となっていたのが「コスト」だと加納氏は話す。
「従来の乾燥技術ではコストが高すぎて(乾燥することが)難しい状況でした。堆肥化するのも社会的に良いことをしているアピールにはなりますが、廃棄するよりもコストがかかることが多いため、コストダウンどころかコストアップになってしまう。食品メーカーの方と話をしていても、経済的に見合うかたちで、リサイクルではなくアップサイクルができる手段に対しては、期待値がかなり高いと感じています」(加納氏)
例えばフリーズドライ装置は食品の品質を保ちやすく、酸化も抑えられるが、価格の高さがネックになりやすい。大型のものになると数億円規模の導入コストがかかるほか、電気代をはじめとする運用コストも高額だ。イチゴなどのような一部の食品を除くと費用対効果が合わず、小規模な事業者には導入が難しいという。
一方で熱風乾燥機は数百万円ほどで導入できるものも多いが、長時間にわたって熱をかけ続けることになるため、酸化による色の劣化や風味の劣化が課題となる。
ASTRA FOOD PLANの過熱蒸煎機は最小モデルの機種で1500万円程度から。またレンタルすることも可能なため高額な装置ほど負担が大きくない(現時点ではタマネギが原料の場合のみレンタル可能)。数百度の高温スチーム(過熱水蒸気)を用いることで、食材の酸化を抑え、栄養価の損失や風味の劣化を防ぎながら処理ができるとしている。
これまでの過熱水蒸気の発生方式ではボイラーでの加熱が2回必要で、それがエネルギーコストが増える要因になっていた。ASTRA FOOD PLANの場合はボイラーを用いることなく過熱水蒸気を発生させる仕組みを構築したことで、大幅なコストダウンを実現したという。
ランニングコストを抑えるという観点では、5〜10秒程度で乾燥と殺菌を同時にできるのも強みだ。
「コストがかかりすぎるがゆえに、乾燥するよりも廃棄した方が安い」という現状を打破することができれば、かくれフードロスのアップサイクルは広がっていく。それが加納氏の見立てだ。
ASTRA FOOD PLANでは過熱蒸煎機を顧客へ販売、もしくはレンタルし、工場などに設置してもらう。そこで製造されたパウダーはASTRA FOOD PLANが買い取り、食品メーカーなどに販売することで収益を得る。