前者はCandeeから引き継いだもので、インフルエンサーを起用したD2Cブランド「TRUNC 88」を運営。後者はBRANDITが今回の調達資金を活用して今後さらに力を入れていく領域で、その主軸になるのが6月にローンチしたBRANDIT systemだ。
冒頭で触れた通り、多くのアパレル事業者は事業を運営するにあたって必要な情報を複数のツールを使って管理している。たとえば受注金額は「販売管理システム」、原価や利益に関する情報は「在庫管理システム」、出荷予定日などは「WMS(倉庫管理システム)」といった具合だ。
BRANDIT代表取締役CEOの鍛治良紀氏によると、アパレルでは役割や業務が細分化されていることもあり、各担当者が「異なる方向を向いて、バラバラのツールを使いながら、異なる数字を追いかけている」状態になりやすいのだという。
BRANDIT systemの特徴の1つは、それらの情報を一カ所に統合することで全員が必要な情報に直接アクセスでき、業務効率化に繋がること。同サービスに各担当者が保有している情報を順々に入力することで、アイテム単位の詳細なデータベースが作成される。
具体的にはまずMDや生産担当者が、商品の予定原価や販売予定価格、品番などを入力。それに続くように、ウェブ担当者やロジスティクスの担当者が詳細な商品情報、入出荷のデータなどをアイテムごとに追加していく。
これらの情報はWMSと自動連携できるほか、表側のECサイトにも反映される。一連の業務が1つのサービス上だけでできるので「大幅な業務改善が見込める」(鍛治氏)という。
アパレルの悪しき文化「売り上げ至上主義」を変えるECシステム
また鍛治氏はデータを集約することで、業務効率化に加えて「今までにない気づきが得られる」とも話す。
BRANDIT system上にはアイテムの原価や仕入数、在庫、売上など全ての情報がたまっていくので、粗利なども全員がすぐに把握できるようになる。ZOZOTOWNやSHOP LIST.comなどのプラットフォームでの販売情報をCSV形式で登録しておけば、各サイトの手数料情報も加味した上で「チャネル別の粗利」まで自動で算出される。
「アパレル業界の悪しき文化として、売り上げ至上主義で『売上のトップラインさえ伸ばせればいい』と考えがちです。ただ経営の観点では粗利をどれだけ出せているかが非常に重要。それを誰もが、簡単に見られるような環境が必要だと考えました」(鍛治氏)