「アフリカでは、国のサイズ感によって市場規模が異なります。例えば、ナイジェリアの人口は約2億人ですが、ウガンダやケニアは4000万〜5000万人です。また、同じナイジェリアでも、首都(内陸のアブジャ)と経済の中心地(沿岸部のラゴス等)は違います。アフリカの市場規模は変化も多く、予測が難しい。僕らも2018年まではケニアで事業を展開してきましたが、ナイジェリアの市場規模が拡大するとともに、2020年からナイジェリアを中心に事業を展開しています」(永井氏)
「サポート体制の構築」「大手企業の巻き込み」を徹底
前述のとおりSENRIは現在、大手企業を含む累計150社以上が導入、取引額も12億円を越えている。結果として、もともと課題だった営業マンの働き方も改善。約2000人の残業をゼロにした。この5年で、どうやってここまで成長させることができたのか。永井氏によると、その要因は「ITの知見がないユーザーへのサポート体制」にあるという。
「アフリカでのスマホ普及率は高いと言えど、通信環境が整っているわけではありません。SENRIをリリースした2015年当時は今以上にインターネットがつながりにくかったですし、ネット広告よりもコールドコールのほうが効果的でした。当然ながら、サブスクリプションのような考え方もなく、営業先では『じゃあ、サーバーにシステムを入れてくれ』という人がほとんど。そこで、ITの知見がない人でもすぐに理解できるサポート体制を徹底しました。それが、今の数字につながっていると思います」(永井氏)
それと同時に、あまりインターネットに慣れていない人でも、すぐ使い始められるUI(ユーザー・インターフェース)を実装。さらに、SAPなどのERP(統合基幹システム)との接続のほか、現地で普及しつつあるケニアのモバイル送金サービス「M-PESA」やチャットアプリの「WhatsFApp」、Googleの各種ツールなどともAPIを連携させた。
営業担当者と小売業者の間で交わされる受発注のやりとりも、トラッキングやモニタリングができるようにしている。特筆すべきは、SENRIのベータ版時代からロレアルやホンダ、味の素などの大手企業が導入していることだ。
「スタート当初から、なるべく早い段階で大手企業を巻き込みたいと考えていました。アフリカやアジアで何十年もかけて流通網をつくってきた企業なので、彼らにも課題はあるものの膨大な知見があります。そんな人たちと一緒に流通のデジタル化を進めたほうが効率的ですし、何より、彼らの歴史を直に聞けるのは役得です」(永井氏)