社会の公器になるとは、まさにそういった構えが必要であると感じます。まさしくSDGsやESGといった所作が、収益的に卓越した上場を見据えることのできる企業の中に自然とビルトインされてきている姿を感じ、事業成功と社会的な善は両立しうるものだとの思いを改めて強く持ちました。

また、2019年末のこちらの特集においては、以下の点を挙げさせていただきました。

  • ESGというテーマが機関投資家の建前ではなくメインの投資クライテリアに組み込まれつつあること
  • 社会課題解決という軸が競争優位となり採用面や顧客獲得、また、IPOにおいても強みを発揮してくること
  • 個人的に2020年の注目していきたい分野(1)建築、不動産、製造業のレガシー産業のバーティカルSaaS、(2)物流等の社会的インフラにおける広範囲のTech Enablement、(3)人事、人材関連のソリューション、HR Tech

上記についての振り返りでいうと、ESGや社会課題解決というアングルについては、言うまでもなく当初の予想を超え社会の強い要請となり、今後もその強度は増していくと考えます。また、後段のテーマに関しても様々なスタートアップの動きが印象的でした。例えば、私の担当する支援先においても、物流スタートアップのオープンロジが大型調達を果たしたほか、人材関連においてはHR Brainに新たに投資させていただきました。この注目分野に関しても、2019年冒頭に感じていた以上に高い社会的な期待値を感じる1年でした。

これらに加えて、製造業の分野ではアペルザキャディがプラットフォーマーとなる機会を虎視眈々と狙っています、また、建築、不動産などについても商取引において今後大きな潮流の変化がくるのは火を見るよりも明らかなので、しっかりと業界の深掘りをし勉強をし、積極的に投資機会をうかがっていきたいと考えています。

全ての消費や行為に「意味」を問われる時代がくる

2021年以降に関しては、DXはもはや当たり前の企業活動となり、ある意味ECと同様の抽象度の高い言葉として、それ自体あまり深い意味を持たなくなっていくと感じます。今後、いわゆるDXに求められるものはより進化し、単なるデジタルオペレーションの実装という内容を超え、どの業界のどの業務をどうアップデートし、解決する課題は何か。そのサービスの実装前後における明確なビフォー・アフターの世界観の差異が求められてくると感じます。

一方で、コロナ禍による社会の価値観が大きく揺らぐ中、競争や効率性といった「物差し」が溶け、より全ての消費や行為に「意味」を問われる時代がくるとも感じます。すなわち、より人生の彩りや生活を豊かにするサービスの必要性は高まると感じます。その文脈において、個人的には再度D2Cのアングルに注目していきたいと考えています。

また、B2Bソリューション・SaaSにおいても、引き続きレガシー産業や人材等、社会的インパクトの大きな分野に対するソリューションが興隆をみせると思いますが、単にLTV・CACといったKPIにおける成功要因だけでなく、サービスの人格、社会に対する構えがより問われてくると感じます。