グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一

■2019年の振り返り

 2019年は、コンシューマインターネットやネット完結の領域から、SaaSやデジタルトランスフォメーション(DX)に大きく資金が流れていき、未上場調達市場でB2CのみならずB2Bでもバリュエーションが上昇し大型調達が可能となった。

 また、ソフトバンク/ヤフーの資本のパワープレイ(ZOZO買収、LINE統合など)は、テック業界の競争を一変させた。スタートアップは事業領域選定や、提携/M&A戦略において、大企業との関係を考慮することが必須となった。

■2020年のトレンド予測

 すでに2019年末で、強気一辺倒のIPO市場は減速の兆しも見られる。来年は高い時価総額で調達したスタートアップの一部が、IPOも含む次の調達で苦労することも増えるだろう。しかし、本質的な構造変化としては、事業成長を先取りした高時価総額で大型調達し、その分+αの成長をする、結果IPOまでが長期化し、大型化するというのが、セオリーとなるだろう。“Scale or Die”の大競争時代の到来となる。

 経験豊富な起業家が実績をてこに大型調達しさらに競合を突き放す一方、経験が少ない起業家は早い時期での大企業へのM&Aやシリアル化の道を歩むだろう。起業家の層は益々厚くなり、競争はさらに激しくなる。

 テーマは、引き続きSaaSを中心としたB2Bが活況を呈するだろう。領域(業界×業務)特化のバーティカルSaaSは対象顧客をいかに拡大するか、機能(会計、HR、MAなど)特化のホリゾンタルSaaSはいかに顧客にとって不可欠なソリューションになるかがカギとなる。日本でSaaS導入が本格化する中、顧客の競争優位への貢献が客単価や継続率向上に繋がり、それに成功した勝ち組SaaSが台頭してくるだろう。

 DXも、多くの産業で進展する。変革の必要性がマグマのように蓄積し“Time to Change”に達しているヘルスケア、サプライチェーンも含めた製造業、サービス業が大きく変容するだろう。

 また、AI、VR、ブロックチェーンなど新技術もアプリケーション先が見えてきており、お金の流れや払い手が明確なB2Bから本格的に事業化が進んでいく。

Eight Roads Ventures Japan Principal 村田純一

■2019年の振り返り

 SaaSに始まりSaaSに終わった1年だったと思います。またSaaSが業界として市民権を手に入れ、大企業に利用され始めたという意味でSaaSテックスタートアップにとって重要な1年だったと思います。一方で、これからはSaaSであるかどうかよりも、より「本物」であることが問われる、つまり解決する課題の本質、解像度がより問われると感じます。その意味においても分岐点として重要な意味を持つ1年になった気がします。

■2020年のトレンド予測

 事業である以上、売り上げや成長率、LTV/CACなどの各種収益指標はもちろん重要ですが、今後は社会課題に対するソリューションとしてのビジネスの構えがより重要になってくると思います。欧米の機関投資家にとってはESG(Environment, Social, Governance)というのは、もはや建前ではなくメインストリームの投資クライテリアに組み込まれつつあります。収益面での事業成長は言うまでもなく重要ですが、どのような社会の問題を解決しようとしているのかという点において、ブレない軸を持ち得る企業が、採用面でも顧客獲得においても、またIPOにおいても強みを発揮してくると思います。

 継続して追っているテーマもありますが、特に来年個人的に注目していきたい分野は、

1. 建築、不動産、製造業等のレガシー産業のバーティカルSaaS
2. 物流等の社会的インフラにおけるより広範囲のTech Enablement
3. 人事、人材関連のソリューション、HR Tech

 この分野の内外を問わず、社会課題解決型のスタートアップに、より多くお会いできるのを楽しみにしています。

DGインキュベーション 取締役 三村泰弘

■2019年の振り返り

 スタートアップの調達環境は引き続き好調なものの、調達件数自体は減少しており、また、バリュエーションは高くなっている印象。この環境下、大きく調達できているスタートアップが増加しているように感じている。来年はさらにその傾向が強まるのではと考えている。

 また、機械学習を提供サービスのプラットフォームに組み込んだり、サービスの一つとして提供したりするスタートアップも多く出てきた。

■2020年のトレンド予測

 SaaS/サブスク系、新しい消費者行動を促すto Cマーケット系、決済や消費者行動解析などにまで派生しつつあるMaaS系、サイバーセキュリティ系などに引き続き注目をしている。

 海外投資については、今後の景気変動を見据えた取り組みが一層必要と認識している。数十年前までは、新興国は経済成長率が高いが経済のファンダメンタルズは弱いというイメージだったが、現在は先進国より外的ショックに対する抵抗力が強い。

 そのような環境から、人口構造において若年層が多い東南アジア・インドで、成長性の高いマーケットプレイス系スタートアップへの投資に引き続き注力していく方針。ユニコーン企業が続々と増えているこれら地域では、今まで以上の過熱感が出てくるだろう。一方、米国では景気に左右されずにパフォーマンスをあげることができるリユース系やMaaS関連(電動スクーターや駐車場予約サービス)のスタートアップへの投資を進める。

 2020年1月、DGインキュベーションからDGベンチャーズへと社名を新たに、グローバルでの投資と事業支援体制をさらに充実化させていく。