研究グループではこれまでの成果について「大電流による殺虫方法は、解凍品に比べて品質の劣化が少なく、チルド食品に近い品質が保たれています。これまで刺身用の魚のアニサキスを殺すには冷凍するしかありませんでしたが、この技術は冷凍に代わる新しい殺虫方法として期待されます」と結論づける。

パルス処理前と後のアジの魚身 加熱や冷凍をしないため見た目の変化が少ない
パルス処理前と後のアジの魚身 加熱や冷凍をしないため見た目の変化が少ない

研究グループでは今年の秋を目処に、プロトタイプ機で処理した生食用刺身のサンプルを出荷する予定だ。同グループはこの殺虫方法に関する特許を出願しており、将来的には装置の販売を目指す。まずはアジ以外の魚身を用いた試験、そして大量生産可能な装置の開発を進める。

ジャパン・シーフーズ代表取締役の井上陽一氏は説明会で「寿司や刺身の文化は世界に広がり、和食はユネスコ無形文化遺産に選ばれました。日本人が大事にしてきた生食文化に対する情熱の火を絶やしてはならないと考えています」と述べた。

井上氏が言うとおり、寿司や刺身の文化は日本から世界へと広がった。だが一方で、食中毒を懸念して新鮮な生魚を避ける人は少なくない。パルスパワーを活用した殺虫装置の低コスト化が実現できれば、海外における寿司や刺身の更なる普及につながるかもしれない。