大まかなサービスの流れ
大まかなサービスの流れ

YOJOの創業者で代表取締役を務める辻裕介氏は大学病院に医師として勤務していた経験の持ち主で、その際に「患者と医療者の間に距離があることを課題に感じた」のが起業のきっかけになった。

「現状の医療では患者が体調不良になり、医療機関を受診した段階でようやく(医療者との)接点が生まれます。その接点もほとんどの場合は数分の診療や服薬指導で終わってしまい、再診がない限りはフォローアップの機会もなく、点と点の関係になってしまいやすい。そこに問題意識を感じていました」(辻氏)

YOJO Technologiesのメンバー。中央が代表取締役を務める辻裕介氏
YOJO Technologiesのメンバー。中央が代表取締役を務める辻裕介氏

医療者にいつでも相談ができ、個別丁寧な診療やアドバイスが受けられ、アフターフォローも適切に行われる“シームレスな医療体験”を実現できないか──。そのような考えから辻氏は機械学習エンジニアである共同創業者の上野彰大氏と2018年にYOJOを設立した。

現在同社には薬剤師の免許を持つメンバーも社員として複数人参画しており、エンジニアと薬剤師がタッグを組む形でプロダクトの開発を進めている。

表向きはLINEを用いたシンプルなサービスに見えるが、薬剤師が使うCRMツール(顧客管理ツール)は自社で開発。数万人規模のユーザーに対してすべての対応を属人的に行っていては負荷が大きいため、初回の自動問診など、自動化できる部分は極力人手をかけずに済む仕組みを作ってきた。

自社で開発したCMS
自社で開発したCMSの管理者画面のイメージ

また薬剤師が適切なコミュニケーションを効率よく進められるように、チャット画面のすぐ横にユーザー情報を表示したり、メッセージの入力をアシストする機能を設けたりするなど、管理画面の設計も継続的に改善を重ねているのだという。

こうした取り組みの結果、当初と比較して薬剤師1名あたりの生産性は約10倍になっているそう。YOJOでは薬剤師へのチャット相談自体は無料ででき、医薬品の購入に繋がるのはその一部に過ぎない。それでも事業として成り立つのは、自作のCRMを用いた高効率のチャットオペレーションが構築できているからだと辻氏は話す。

加えて同社の要でもある薬剤師の採用については、リモートワーク体制を軸に働きやすい環境を整えることで人材を確保してきた。医薬品の販売には実店舗を構え、そこに薬剤師が常駐する必要がある。そのため薬剤師免許を持ちながらも、出産や育児、介護などの事情から離職せざるを得ない人も少なくない。

YOJOの場合は四谷の店舗に出勤する薬剤師とリモート勤務する薬剤師の分業体制を取ることで在宅勤務を可能にし、これが採用の強化にもつながっている(具体的にはリモート薬剤師がチャットの下書き部分を作成し、店舗薬剤師がその内容を確認した上でユーザーに返答するといった形で役割分担。この体制自体は保健所にも問題がないことを確認済みだという)。