はじめに、けんすうさんがプロセスエコノミーについて最初に書いたnoteを参考にしながら説明しましょう。
 
「プロセスエコノミー」をわかりやすく理解するために、まず逆の概念を考えてみましょう。これを仮に「アウトプットエコノミー」とします。

アウトプットエコノミーは、「プロセスでは課金せずに、アウトプットで課金する」というものです。たとえば、 

  • 音楽を作っているところではお金は稼がず、できた音楽を売る 
  • 映画を作っているところではお金は稼がず、できた映画を売る 
  • 料理を作っているところではお金は稼がず、できた料理を売る

 などです。  

売り方は、お客さんから直接課金するケースもあれば、テレビのように広告モデルにするなど両方がありますが、どちらもアウトプットで稼いでいるという点では同じです。このように、アウトプットエコノミーとは、普通の人が考える、極めて一般的な商売の仕方です。

そのアウトプットエコノミーで何が起きているかというと、すべての水準が上がり続けているという状況です。品質もいいし、値段も手頃だし、流通もしっかりしていてちゃんと届きます。
 
そして、水準が上がりきった結果、差が小さくなっているというのが今の状況です。

そんな状況なので、プロセスが相対的に重要視されるようになってきました。なぜプロセスを見られるようになっているかというと、「アウトプットエコノミーが一定の規模まで到達したことで、もう差別化するポイントがプロセスにしかない」となったからだと考えています。

アウトプットの差がなくなったことで、価値を出すならプロセス、という感じになっているのです。そして、プロセスに価値が増えていった先にあるのが、プロセスエコノミーです。

所属欲求を満たすための消費活動

プロセスエコノミーの大切さを理解するうえで、もう一歩踏み込んで、個人が何を求めて消費をするかを考えていきましょう。

今の消費者は物質的なモノより内面的なコト。自分のアイデンティティを支えてくれる、自分の所属欲求まで満たしてくれることをブランドに求め始めているのです。
 
なぜか。それはリアルの世界でのコミュニティの消滅という要因があります。 90年代以降の30年間を通じて、都市部は「隣に住んでいる人の顔も名前も知らない」という人類史上初めての状態に突入しました。
 
それまで人々は、自分が生まれた場所で他人と支え合って生きてきたわけです。自然災害や感染症など予期せぬ生命の危機に見舞われたり、食糧の危機が起きたりすることがあります。そんなときには隣近所、向こう三軒両隣で支え合いながらなんとか生き延びてきました。
 
所属欲求なんてわざわざ抱かなくとも、人々は必要に迫られ自分が暮らしているリアルな場所で地域コミュニティに所属していました。しかしながら、今や隣に住んでいる人の顔と名前を知らなくても困ることはありません。逆に下手に近所づきあいをしてしまうと、近隣住民とのトラブルが発生するリスクすらあります。
 
おかしな人と出会ってしまったときに、ネット空間であれば引っ越しは簡単ですが、リアル空間ではそうそう簡単に引っ越しするわけにはいきません。次第に人々は近所づきあいをしなくなりました。都市部には大勢の人が密集しているのに、いつでも集えるリアルな場所がどこにもなくなってしまったのです。