なぜ、ここまでBNPL市場は盛り上がりを見せているのか。その理由について、鈴木氏はこのように解説する。

「日欧米などの先進国においては、従来の金融機関の与信審査に弾かれてしまっていた人でも“クレジットカードのような使い方”ができるとして、若年層を中心に支持を集めています。一方、東南アジアなどの新興国ではそもそもCIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)のような信用機関がありません。そのため、オンライン決済のいち手段として後払い決済が使われています。今後、新興国では後払い決済サービスでの支払い履歴などが与信情報となり、それをもとにクレジットカードを発行するといった流れが出来上がっていくと思います」(鈴木氏)

この10年で起きた国内のクロスボーダーM&A事例

おもなITスタートアップのクロスボーダーM&A事例
おもなITスタートアップのクロスボーダーM&A事例

「PayPalが3000億円でPaidyを買収する」と大々的に報じられた今回の一件だが、海外企業による日本発スタートアップのクロスボーダーM&A事例は増えてきている。

直近10年ほどで見れば、2010年にはゲームサービス「まちつく!」などを開発していたウノウ(代表の山田進太郎氏は、のちにメルカリを創業。現在も代表取締役CEOを務める)を米ソーシャルゲーム大手のZyngaが買収したことが業界で大きく話題になった。2015年にはThe Match Groupがエウレカを買収。公式な買収額は発表されなかったが、業界関係者の間では100億円超の大型クロスボーダーM&Aとして知られていた。

だが今年に入ってから潮目が変わりつつある。Googleによるpringの買収も100億円超となり、今回は約3000億円という大きな評価がついたからだ。

また、スタートアップの買収額と時価総額を同じ理屈で評価できないものの、クラウド人事労務ソフトのSmartHR(約156億円)や製造業向けの受発注プラットフォームのキャディ(約80億円)などが、海外投資家を含む大型の資金調達を実施している。買収、出資対象として、国内スタートアップに対する視線も徐々に熱を帯び始めている。