Squareは約3兆円でAfterpayを買収、群雄割拠のBNPL市場

Paidyの設立は2008年。当初はエクスチェンジコーポレーションという社名で、ソーシャルレンディングサービス「AQUSH(アクシュ)」(編集部注:2018年6月にソーシャルレンディング事業から撤退している)を展開しており、2014年に現在のPaidyをリリース。その後、事業をPaidyに集中させるとともに、現在の社名に変更している。

経済産業省が発表した「令和2年度電子商取引に関する市場調査」によれば、2020年の日本のBtoC EC市場規模は19.3兆円。これは中国、米国、英国に次いで世界4位の市場規模だ。その一方、EC化率は約8%しかない。また、決済手段としても“現金”の人気は根強く、キャッシュレス決済比率も2020年時点で29.7%しかない。

「EC化率、キャッシュレス決済比率がそこまで高くない日本において、後払い決済サービスのような“現金をオンライン化する”仕組みは、まだまだ成長余地がある。その点がPayPalに評価され、3000億円での買収に至ったのではないか」と、ジェネシア・ベンチャーズ ジェネラルパートナーの鈴木隆宏氏(編集部注:鈴木氏も田島氏同様サイバーエージェント・キャピタルの出身)は語る。

PayPalは2020年8月に、4分割払いができる後払い決済サービス「Pay in 4」を展開しているが、日本市場におけるPayPalの存在感はそこまで強くない。また、過去にはソフトバンクと組んで日本市場に参入していたが、失敗に終わっている。

そうした背景もあってか、今回PayPalは日本のオンライン決済市場で存在感を示すPaidyを買収し、彼らの顧客基盤を活用することに可能性を見出したのではないだろうか。実際、PayPalは2019年にCVCのPayPal VenturesからPaidyに出資している。

今回のPayPalによるPaidy買収に限らず、決済大手がBNPL企業の買収を進める動きは激しい。海外ではモバイル決済サービスを手がけるSquareがオーストラリアの後払い決済サービス最大手の「Afterpay」を約3兆円で買収。

また、サンフランシスコ発の後払い決済サービス「Affirm」は2021年1月に米ナスダック市場に上場し、Amazonとの提携も発表している。そのほか、スウェーデン発の後払い決済サービス「Klarna」はソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)などから約700億円を調達し、企業価値は約5兆円にまで膨らんでいる。