国交省では2018年1月から3月にかけて、東京都内で相乗りタクシーの実証実験を実施。大和自動車交通グループと日本交通グループによる協力のもと、両社の配車アプリを活用し、949両の相乗りタクシーを運用した。マッチング率は1割と低かったものの、7割の利用者が再度利用したいと解答したことで、ニーズに関しては手応えを得られた。実証実験から制度の解禁まで3年以上を要したのは、「コロナ禍でタクシーのニーズが減っていたことも一因としてある」と国交省・自動車局旅客課の担当者は説明する。

新たに制定された制度では、乗客間における運賃にまつわるトラブルを防ぐため、乗車前に運賃額が確定する運用を原則としている。また、目的地の設定によっては自宅や勤務先を知られるなど、プライバシー上のリスクに関してタクシー事業者が乗客に対して注意喚起することも求められる。相乗り人数に関するルールはないが、車両の大きさによるタクシーの乗客定員に準ずる。ただし当面の間は旅客同士が隣り合わない座席指定など、感染対策に必要な配慮が事業者には求められている。

配車アプリ「GO」は「サービス提供を今後検討」

大手タクシー事業者は相乗りタクシーの解禁をどう見ているのか。配車アプリ「GO」を展開するMobility Technologiesの広報担当者は「弊社からはまだ何も発表しておらず、まだ(相乗りタクシー事業を)スタートしていない段階です」と話す。

Mobility Technologiesは日本交通ホールディングス子会社のJapanTaxiとディー・エヌ・エーの配車アプリ「MOV(モブ)」事業が統合、2020年4月に新社名となった。2020年9月からは両社のアプリを統合した新アプリ、GOとして展開する。

同社広報は「JapanTaxiでは相乗りタクシーの実証実験は実施したが、今はMOVと統合した新たな体制だ」と話し、「相乗りサービスを提供していくかは今後検討していく」と説明した。

その他、配車アプリを活用するタクシー事業者もまだ目立った動きを見せていない。一方スタートアップのNearmeは新制度の導入を受け、市街地における相乗りタクシーの展開を本格化。11月12日には相乗りシャトルサービス「nearMe.Town」を12月より開始すると明かした。同サービスでは東京都・中央区、千代田区、港区、江東区の一部エリアにおいて、事前予約制で最大5人まで乗車できる相乗りシャトルを運行する。