「翻訳の難点は、ユーザーが置かれている状況次第で意味合いが変わるところです。例えば、伝えたい相手が上司か友達かによって、言い回しは変わります。でも、文章を入れて翻訳するだけでは、そういった背景を拾いきれないんですよね」

「さらに、日本語には尊敬語や丁寧語があり、身内に対しては敬称を付けないルールもあります。日本語に限らず、英語でも単語によって独特の言い回しがあったり……。そういったところもカバーできるようになれば、より信頼性は高まりますよね」(賀沢氏)

2019年にはリアルタイム翻訳ができる “通訳モード” も登場している
2019年にはリアルタイム翻訳ができる “通訳モード” も登場している

リリース当初は「いろいろ翻訳できて便利」と言われていたが、今では『なぜ翻訳できないんだ』と言われるケースが増えている。また、「翻訳は『使ってみないとわからない部分』が多い」と賀沢氏は言う。

「Googleには検索機能やデバイスなど、さまざまなプロダクトがあります。ニューラルネットに基づく機械翻訳の採用、そして音声認識の質も向上したこともあり『こういう使い方はできないか?』という問い合わせも増えました。質が向上することで、新たに使い方を発見してもらえるのが翻訳ツールの特徴です。今後は、プロダクトとのさらなる掛け合わせで、活用の機会がぐっと増えると思っています」(賀沢氏)

翻訳ツールが進化すれば、情報の流れはより早くなる

世の中は常に変化する。同時に、新たな言葉も生まれ続ける。Google 翻訳が「完璧な翻訳」を目指す限り、質の追求に終わりはない。

「僕らとしてはGoogle 翻訳を使っていただきたいですし、正しく翻訳したい。なので『これは訳せなくていい』と言える立場ではないんですよね。世界中では、今も新しい言葉が生まれ続けています。その反面、使われなくなる言葉も出てくる。その両方をキャッチアップしながら精度を高め続けるのは、難しいチャレンジでもあります」

「新しい言葉を見つけるだけでなく、一部のコミュニティで使われる言葉にも敏感ではなくてはならない。そこに『海外へ発信したい』気持ちがあればできるかぎりサポートできるようにしたいんですよね」(賀沢氏)

いかに言語をサポートできるかが、Google 翻訳の信頼性へ直結する。言葉が自由になれば、当然ながら行動範囲が広がる。そのため「今後は翻訳ツールとしての進化はもちろん、活用の場も考えなくちゃいけない」と賀沢氏は語る。

現在では、Google 翻訳以外にも「DeepL翻訳」など他社の翻訳サービスも続々と登場している。その状況を、賀沢氏はどう感じているのか。