アキュリスファーマでは神経・精神疾患領域において、その受け皿となることを狙っているわけだ。

ゼロから新たな医薬品メーカーの在り方を探究

海外ですでに承認済みの薬剤を日本へ導入するというアプローチは、新薬の社会実装を早めるという観点でもプラスに働く可能性がある。

薬剤が世に出ていくまでの承認フロー自体は変わらないが、海外で承認を得ていることによって議論の過程を短縮できうる余地があると綱場氏は話す。アキュリスファーマはこの領域の専門性の高いメンバーが集まっているため、さらにその速度を高めていくことを目指している。

加えて、同社では「承認を得た薬剤を世に普及させるまでのプロセス」も既存の医薬品メーカーとは異なる手法を模索していく計画だ。従来はMR(医薬情報担当者)と呼ばれる人材を中心に、人海戦術で医師に情報提供を進める方法が主流だった。アキュリスファーマの場合はMRの人材もいないため、まったくゼロから最適な手法を考え、選択できるという。

「何もない状態であることが、強みにもなると思っています。これだけデジタルやDXが叫ばれる中で、医薬品業界はすごく遅れてしまっている状況です。医師に対する情報提供の方法などに関しても、SNSやデジタルをもっと使えるはず。自分たちはゼロベースで、ベストなチャネルを考えていきます」(綱場氏)

68億円調達で事業加速、テック企業との連携も見据える

アキュリスファーマとしては、まずは今回調達した資金も活用してピトリサントの日本での商業化に向けて注力する。ただ中長期的にはテクノロジーを活用した新たな取り組みなどにも力を入れていく計画だ。

たとえば睡眠障害の領域でいえば「スリープテック企業」との連携などもその選択肢の1つだろう。医薬品に付随するデータなどが集まってくれば「自分たちが触媒となってデジタルソリューションを手掛ける企業などを巻き込みながら、プラットフォームを形成していきたい」(綱場氏)という。

綱場氏によると、今回の資金調達もそれを見据えた株主構成を意識している。

  • SoftBank Vision Fund 2
  • キャタリスパシフィック
  • HBM Healthcare Investments
  • Global Founders Capital
  • 三井住友トラスト・インベストメント
  • ANRI

リード投資家のSVFはAI関連をはじめテック系のスタートアップが投資先に多く、投資先とのネットワークやガバナンス面のアドバイスも期待できる。

キャタリスパシフィックとHBM Healthcare Investmentsは共にヘルスケア領域に特化したVCで、グローバルで先をいく医療スタートアップの知見を得るのが目的の1つ。Global Founders Capitalや日本のANRIはさまざまな領域の企業へ投資をしているため、スタートアップ全般に共通する経営手法についてもキャッチアップしていきたいという。