1つ目の海外VCに関しては、2020年から2021年第3四半期にかけて国内スタートアップに投資実行した海外VCは推計45社にのぼる。

海外VCによる国内スタートアップへの投資が広がっている
海外VCによる国内スタートアップへの投資が広がっている

Sequoia Capital(およびSequoia Capital China)を筆頭に世界的に知られるトップティアVCに加え、クリプト特化やディープテック特化など個性的な投資家も新たに日本に進出してきている。国内ではまだあまり知られていないようなプレーヤーも含め、さまざまな海外VCが日本に目を向けるようになったと言えるだろう。

2つ目の国内外のクロスオーバー投資家に関しては、推計32社が2020年から2021年第3四半期にかけて国内スタートアップへ投資を実行している。こちらもFidelity InternationalやT.Rrowe Priceなど以前から国内で投資をしていた投資家に限らず、顔ぶれが広がっている状況だ。

クロスオーバー投資家によるグロース投資も一気に加速している
クロスオーバー投資家によるグロース投資も一気に加速している

最後の海外PEファンドについては、過半数の株式を取得する「マジョリティー投資」は以前から盛んだったものの、ここ数年でスタートアップへの「マイノリティ投資」も珍しくなくなってきた。

9月にバイオテック企業のSpiberに投資をしたカーライルや、11月に医療スタートアップのリンクウェルに投資をしたベインキャピタルなど、国内でも海外PEファンドによるスタートアップ投資の例が少しずつ生まれ始めている。

海外PEによる国内スタートアップ投資も今後の注目トピックの1つだ
海外PEによる国内スタートアップ投資も今後の注目トピックの1つだ

海外投資家の参戦が加速、背景に起業家のレベルアップ

特に海外投資家の存在が目立つようになった背景には、どのような背景があるのか。村田氏、千葉氏と話をする中で以下のような点が挙がった。

  • 英語で情報発信ができる起業家、経営陣の増加
  • 海外投資家と積極的にコミュニケーションを取る起業家の増加
  • CFOのレベル向上
  • 日本のマーケットや起業家への評価の向上(適正化)
  • 米国を筆頭にした海外スタートアップの評価額の高騰
  • 中国スタートアップへの投資の難易度上昇(規制の観点など)

まず大きいのが起業家側の変化だ。必ずしも海外市場にチャレンジしようとしているスタートアップだけでなく、国内市場を狙っている企業も含めて海外投資家と積極的にコミュニケーションを取るようになっているという。

「たとえば上場を見据えるスタートアップが(海外投資家向けに)インフォメーションミーティングを英語で開催することが常態化してきています。結果的に海外投資家にとってはその場が日本の有望なスタートアップを知る機会、言わば『ユニコーン候補のリスト』が手に入る機会になっている。そこから機関投資家同士で情報交換がなされたり、彼らが出資する海外VCへと情報が共有されたりすることで、日本のスタートアップの存在が認知されていくんです」(村田氏)

起業家や投資家として日本のスタートアップ業界に長く携わってきた千葉氏も、自身が米ナスダックに上場したSPACの社外取締役として、日本の起業家と英語で頻繁にミーティングをするようになったことでその変化を感じているそうだ。