同サービスにはAI音声案内、録音音声案内、電話転送、SMS自動送信など複数の機能が備わっており、ユーザーはウェブ上からこれらをカスタマイズしながら電話業務を設計していく。

たとえば営業電話に対しては受付フォームのURLをSMSで自動送信する、自社が対応していない業務への問い合わせ電話に対しては録音音声で案内するといった具合だ。通話録音機能もあるため、顧客の分析や伝言の引継ぎにも使える。

IVRyに搭載されている主な機能
IVRyに搭載されている主な機能

IVR自体は決して新しい概念ではないものの、従来はSIerが大手企業向けに開発しているものが多く、初期費用に加えて数十万円規模の月額利用料がかかることも珍しくなかった。奥西氏によると近年はクラウド型のサービスも登場しているが、それでもSMBにとってはコストの負担が大きく、そもそも選択肢に入ることがほとんどないという。

IVRyの場合は3300円の月額利用料に、550円の電話番号維持代や通話代が加算される仕組み。ミニマムで月額数千円から使えるため、コスト面のハードルが低い。加えて最短数分でサービスを使い始められる手軽さや、使いやすいサービス設計などが要因となり、正式リリースから約1年で800社以上(1カ月の無料トライアルユーザーも含む)に導入された。

代表的なユースケースの1つが、病院やクリニックだ。新型コロナウイルスのワクチンに関連する問い合わせの電話が殺到した結果、回線がパンクしてしまい、それ以外の患者の予約が受け付けられないといった悩みを抱える事業者が増えた。そういったシーンでは自動応答のニーズが強く、この業種だけですでに数百社の顧客を抱える。

そのほか飲食店や宿泊施設、食品メーカー、レンタルスペースなど顧客の幅は広く、20以上の業種で活用が進んでいるそうだ。

きっかけは「自身の違い経験」、病院やクリニックを中心に数百社で導入

奥西氏は前職のリクルート時代からプロダクトマネージャーとして複数の新規事業に携わってきた経歴の持ち主で、2019年3月に自身で会社を立ち上げた。

IVRyのアイデアのきっかけとなったのは、起業後の苦い経験だ。奥西氏自身の携帯を会社の代表電話にしていたところ、たくさんの営業電話がかかってきたため無視するようになった。するとそれが原因で融資の確認電話も見逃してしまい、審査に落ちてしまったのだ。

「10%くらいの割合で大事な電話があっても、残りの90%の重要ではない電話によってクリティカルなダメージを受けてしまうこともあります。世の中に同じような課題を抱えている人もいるのであれば、その状況を変えていきたいと思って(IVRyを)始めました」(奥西氏)