半導体・EV 国家ぐるみの覇権戦争Photo by Shotaro Imaeda

これまで、日本は電気自動車(EV)の生産や販売で他国に後れを取ってきた。さらに、足元の世界的なEV失速を受け、ますますEVの普及にブレーキがかかっている。日本勢の“勝ち筋”はどこにあるのか。蓄電池やEV充電器を手掛けるパワーエックスの伊藤正裕社長に、日本が抱える課題と処方箋を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

中国EVメーカーにシェアを奪われないための
ヒントは、アパレル業界のブランドにあり

――日本の蓄電池産業の動向をどう見ていますか。

 日本の電源構成の中で火力発電のウエートはどんどん縮小していき、原子力発電と再生可能エネルギー(再エネ)が拡大していくとみられています。再エネ増加分の多くが太陽光発電です。

 昼間は太陽光でたくさん発電でき、さらに原発が再稼働すると、昼間の電気が余ってしまいます。その場合は火力(発電所の稼働)を抑制して発電量を減らすのですが、抑制する火力発電自体が激減するので、これからは調整力が必要になります。昼間にためた電気を夜に使う。この調整力として、蓄電池の役割はより重要になっていきます。

 米国や中国とは異なり、島国の日本では広大な敷地に巨大な電池を設置することはできません。内陸や山間部に電池を持っていく必要があるので、それに合わせた商品ラインアップをそろえています。当社には、大型の定置用蓄電池のMega Power、中型のPowerX Cube、EV超急速充電器のHyperchargerがあり、幅広いニーズに対応しています。

――今年1月に95億円を調達するなど、積極的に資金調達をしています。今後も資金を獲得していくのでしょうか。

 当社のキャッシュフローは問題なく回っていますが、製品開発のタイミングによっては、もう1回くらい大規模な資金調達をすることになると思います。

――蓄電池の分野で中国勢のプレゼンスが高まっています。地政学リスクをどう見ていますか。

次ページでは、パワーエックスを自ら立ち上げた伊藤社長が、蓄電池ビジネスに潜む地政学リスクを明らかにする。さらに、日本でEVを浸透させるための施策を提示してもらう。興味深いのは、ZOZOから蓄電池産業に転じた伊藤社長が、アパレルとEV業界の「意外な共通点」を見いだしていることだ。異色の経歴を持つ蓄電池メーカートップが提示する、EV普及の“処方箋”とは。