宇都宮ライトラインが絶好調!純利益は「計画の3倍」地元民が歓喜するワケ宇都宮ライトラインは工業団地を走り抜けていく。長府製作所・宇都宮工場前にて Photo by Wataya Miyatake

開業1周年を迎える「宇都宮ライトレール」(次世代型路面電車)が、着実に利用者を伸ばしている。業績も良く、初年度決算では当初計画の約3倍となる純利益をたたき出した。なぜライトラインは宇都宮に定着し、さまざまな効果を生み出しているのか。現地を歩き地元住民にもヒアリングして分かった、好調の要因を探る。(乗り物ライター 宮武和多哉)

国内で75年ぶりの「路面電車」誕生
宇都宮ライトライン1年目の実態とは

 栃木県宇都宮市に2023年8月26日に開業したLRT(次世代型路面電車)、「宇都宮ライトレール」(愛称ライトライン)が、間もなく開業1周年を迎える。7月2日の時点で、累計利用者数が400万人を突破し、出足は順調だ。

 開業前には、需要の見通しや期待される経済効果などを危ぶむ声も多かった。しかし、ふたを開けてみるとそういった懸念は取り越し苦労に終わったようだ。ライトラインは、ホンダやキヤノン、東洋紡、カルビー、長府製作所など大手企業の工場が立ち並び、約3万1000人が勤務する鬼怒川東岸エリアと、西岸のJR宇都宮駅を結ぶ。まとまった通勤需要を背景に、企業送迎バスからライトラインへ通勤手段が順調に転移した。

 また、周辺道路の渋滞が緩和したことも特筆すべきことだ(詳細は後述)。さらに、沿線の価値が上昇し、マンションやオフィスの新規建設が相次ぐなど、良い意味で期待を裏切る効果が出ている。

 開業から24年3月末日までの決算では、鉄道事業売上高が7億3916万円、広告事業やグッズ販売などその他事業売上高は5534万円だった。経常利益は8361万円、当期純利益は5697万円。電気代などの営業費用が上振れしているにもかかわらず、当初計画の約3倍となる純利益をたたき出した。立派な成績と言っていいだろう。

 一般的に鉄道路線の開業は、“絵に描いた餅”となることも多い。実際に、東急・相鉄直通線(23年3月開業、神奈川県)や北大阪急行線の延伸(24年3月開業、大阪府)は、いまだに目標の利用水準に届かず、期待された駅周辺の街づくりができているとは言い難い。

 そうした中で、なぜライトラインは宇都宮の街に定着し、結果を出しているのか。4月に運行開始した快速列車も含めて、筆者も何度か利用した上で、好調の要因を探る。