だからこそ、曲にバリエーションが生まれて、それが幅広いリスナーに届くことにもつながっているのかもしれないですね。

また、音楽を聴く行動の中心がストリーミングにシフトしていったことによって、あまりジャンル聴きはされなくなり、どちらかというと気分で聴かれるようになりました。そのときのフィーリングやムード、シチュエーションに合わせて曲を探して聴くという感じになっています。その中でひっかかった曲が何回も繰り返し聴かれて支持を広げていく、といった傾向があると思います。

今年のキーワードとしては、『今年の新語2021』大賞に選ばれた「チルい(落ち着くという意味の「チル」を形容詞化した言葉)がありました。去年からコロナ禍になって、よりチルする、リラックスするといった気分が求められているのかもしれないですよね。


アルバム、楽曲の世界観をアーティスト自身が発信する

──今年の3月に「Liner Voice+」(アーティストによる音声ライナーノーツとアルバム収録曲を組み合わせたSpotify限定のプレイリストシリーズ)をスタートしましたが、そこにはどういった意図があったのでしょうか

SpotifyがオーディオプラットフォームとしてNo.1になる宣言を全世界にしていることと、8月19日から「Music + Talk」のフォーマットを日本でも使えるようになったことから、それ以降、オーディオフォーマットと音楽のリンクを積極的に考えて編成しています。これまでにaiko、東京事変、RADWIMPS、YOASOBI、クリープハイプで実施し、シリーズとして確立してきています。

【2021年の音楽トレンド】Spotifyのランキングから読み解く、ストリーミング時代のヒット曲の方程式
 

ストリーミングにおいては単曲で聴かれることがメインになっていますが、やっぱりアーティストはアルバムに対してすごく思い入れがありますし、トータルとしての作品性を考えてアルバムを作っている。

そこで、ストリーミング時代だからこそ、アーティストの言葉で語ってもらうことが重要なんじゃないかという想いのもとに始めたシリーズです。アルバムに対してアーティストが持ってる深い想いや、1曲1曲どんな想いを込めて作ったのか、制作過程におけるエピソードなどを語ってもらって、ユーザーにとってアルバムの視聴体験がより豊かなものになるような企画として続けています。

──今後Spotifyがプラットフォームとして目指すものとは。

Spotifyはもともと、聴き放題のいちサービスという位置付けではなく、アーティストとリスナーが出会って関係をさらに強化してもらうためのサポートをする場としてあります。実際にアーティストがSpotifyというプラットフォームを、作品を配信するのみならず、自己表現の場として活用する事例が増えてきていると思います。