時価総額が1兆ドル(約148兆円)を超えるハイテク企業は5社ある。ヘルスケア業界では、米イーライリリーがその最有力候補だ。リリーは今年、大手製薬会社としては初めて時価総額が5000億ドルを突破した。肥満症・糖尿病治療薬の評判が高く、アルツハイマー病治療薬の実験薬も一定の評価を得ていることが背景にある。だが、リリーと競合会社のデンマークの製薬大手ノボノルディスクの前には、大手製薬会社の躍進にブレーキをかける現実、すなわち「特許の崖」が立ちはだかる。「1兆ドルクラブ」に大手製薬会社が入っていない理由はいくつかあるが、医薬品開発に好不況の波があることがその上位に挙げられる。理論的には「iPhone(アイフォーン)」から大きな利益を永続的に上げられる米アップルとは異なり、米国の製薬会社がイノベーション(技術革新)から利益を得られる期間は限られている。特許が切れ、ジェネリック医薬品が市場に参入すると、売り上げは激減する。製薬会社の経営幹部は目先の成長を重視するあまり、そのような事態に備えることはあまりない。