人手不足とインフレによる資材高にあえぐ建設業界。その影響度を調べるため、建設業界のデータベース事業を展開する日本マルチメディア・イクイップメントの協力で、経営耐久度ランキングを作成した。特集『ゼネコン複合危機 全国2565社ランキング』(全18回)の#11では、主要業種「建築一式」に該当する建設会社1092社について、5指標で独自分析した経営耐久度ランキングをお届けする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
コロナ、人手不足、資材高
「三重苦」に最も苦しんだ建築一式
2020年度以降、主要6業種の中で最も厳しい経営環境に追い込まれたのは、建築分野を主力工事とする「建築一式」の建設会社だっただろう。
19年4月1日から22年3月31日までの決算期で、当該期間3年間の「売上高経常利益率」の平均増減率は、建築一式1092社全体で47%減少した。これは、主要6業種で最も悪かった。
主に国や自治体が発注する土木分野の工事では、いわゆる「スライド条項」が請負契約に盛り込まれていた。折からの資材高や労務費の高騰について、発注先である国や自治体に一定程度の価格転嫁ができたのだ。
これに対し、民間工事が中心の建築分野ではスライド条項がほとんど設けられていない。急激な物価上昇や労務費の高騰について、工事を請け負った建設会社が自らかぶるしかなかった。
民間工事を主力とする建設会社にとって、20年度からの2年間は人手不足、新型コロナウイルスの感染拡大、資材高の「三重苦」に悩まされる忌まわしい歴史が刻まれた期間だった。
いよいよ、働き方改革に伴う残業時間の上限規制が24年4月から建設業にも適用される。人手不足の深刻化と労務費の高騰は必至。「2024年問題」が、満身創痍の状態にある建設会社に追い打ちをかけるのである。
では、これまでに各社が負ったダメージは、どの程度なのか。資材高と人手不足の影響度を探るため、ダイヤモンド編集部は、国や自治体に提出する経営事項審査結果を公表している建設業者延べ25万社の情報について、建設業界のデータベース事業を展開している日本マルチメディア・イクイップメント(JME)の協力を得た。
JME提供のデータを基に、「売上高経常利益率」「負債回転期間」「自己資本比率」「技術職員数」「総合評点P」の5指標を採用して全国2565社の経営耐久度ランキングを作成した。
次ページでは、主要業種「建築一式」に該当する1092社の経営耐久度ワーストランキングをお届けする。ワースト1位になったのは、長野県の建設会社だった。