大手ゼネコンの大林組が大林剛郎会長によるトップセールスで、デベロッパー最大手の三井不動産に接近している。特集『沈むゼネコン 踊る不動産』(全20回)の#4では、大林組ら大手ゼネコンが受注を狙う三井不動産のビッグプロジェクト「東京ドーム再開発」の行方を占う。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
大林組会長と三井不動産社長が
「午の会」で接近
7月中旬、「午(うま)の会」が都内某所で開かれた。昭和29年生まれの政財界などの限られた著名人が定期的に交流を深める会で、大林組の大林剛郎会長と、三井不動産の菰田正信社長の姿がそこにあった。
この2人の組み合わせは、ゼネコン業界では意外なものに映るかもしれない。大林組と三井不動産の間には、ゼネコン業界で語り草になっている因縁があるからだ。
2015年に住友不動産の東京日本橋タワーが竣工した。三井不動産の本拠地である日本橋に住友不動産が進出した象徴的なビルである。
大林組はこのビルの開発で土地取得から入り込み、施工を担った。三井不動産のライバルである住友不動産が日本橋に“侵攻”する片棒を担いだ形だ。
三井不動産は大林組の振る舞いに激怒。以来、大林組が三井不動産の大規模再開発プロジェクトを獲得できていないのは、有名な話である。
そんな因縁がある大林組と三井不動産のトップ同士が、インナーサークルといえる午の会で顔を合わせたのである。
大林会長は「誰が大将とか会長とかではなく、仲間同士で声を掛け合っただけ」と意図したわけではないと周辺に語っているという。それでも関係者の間には、午の会の中心メンバーである大林会長の後押しによって、菰田社長が午の会に加わったとの見方がある。
こうした動きに対し、ある大手ゼネコン関係者は「大林組が三井不動産と関係改善を図るのは、東京ドーム再開発の工事を狙っているからではないか」と警戒する。
次ページでは、大林組による東京ドームの再開発の受注に向けた布石、そして受注獲得競争におけるライバルについて解き明かす。