「日本で出版されると世界経済が破滅してしまう」
アメリカでベストセラーになったにもかかわらず、著者本人が日本語版の出版を15年以上許可しなかった書籍を知っていますか? 発売後、日本でも大ヒットし、シリーズ累計で100万部を突破した名作『ザ・ゴール 企業の究極の目的は何か』がその本です。ストーリー仕立てで企業の本質を解き、わかりやすくTOC(制約条件の理論)を解説、アメリカの製造業復活の原典となったとも言われる本書。著者のイスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士に直接取材経験のある筆者が、その交流もまじえながら『ザ・ゴール』を紹介します。

物静かな紳士とエネルギッシュな演者
ゴールドラット博士の2つの顔

『ザ・ゴール 企業の究極の目的は何か』
 2001年5月発行。担当編集者曰く「日本語版のタイトルをつけたらという声もあったが、難解な単語ではなく、刊行前から『THE GOAL』として日本で知られてもいたのでそのまま『ザ・ゴール』に決めた」。
 ストレートなタイトルを引き立たせるシンプルな装丁だが、光の加減でキラキラ光る細かいホログラムが施されている。
「ただシンプルではつまらないので、当時としては最先端の技術だった加工を使った。初版時に『サンプルになるから』と加工代を割り引いてもらったが、あまりに増刷が重なるので業者さんから泣きが入った」(担当デザイナー)とのこと。
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 まるでユダヤ教会の礼拝にでも行くような格好で、その人物は現われました。頭には小ぶりのキッポを載せ、良く糊の効いた真っ白なシャツを着ていました。口にくわえたパイプは、どう見ても”礼拝”にはそぐわないものでしたが……。

 2008年6月、東京都心のホテルの一室。ゴールドラット博士への取材は、こうして始まりました。インタビュアーをつとめた筆者がまず口にしたのは、以下のような質問でした。

――『ザ・ゴール』シリーズの日本語版がダイヤモンド社から4冊出ていますけれども、それらの発行部数が総計で100万部を超えました。この結果に満足していますか。

 博士は答えました。
「私は科学者です。サイエンティストなので、常にアンビバレント(二律背反)なものを持っておりまして。ただ、いまのご指摘については満足しています。それが次のステップの土台となるわけです。ですから、次のステップというのはさらに大きいものであるというふうに私は思っています。達成感がより大きければ、次はもっと大きな建物を造るということになると思うんですね」

 このインタビューがきっかけで、筆者は博士の講演会を垣間見る機会にも恵まれました。会場は独特の熱気に包まれ、普段は物静かな博士が、とてもエネルギッシュで、子どものように興奮していたのが印象的でした。