小説としても評価の高い
ストーリー仕立てで解かれた「企業の目的」

日本人には読ませたくない!?<br />アメリカを復活させたビジネス書の金字塔『ザ・ゴール』シリーズ。ビジネス書の定番シリーズとして、今も多くの方々に読まれています。
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 エリヤフ・ゴールドラット著『ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か』は、世界で1000万人以上が読んだビジネス書の金字塔です。

 もっとも、1984年に米国で出版された後、長らく日本語版の刊行は許可されませんでした。その理由については、博士をして「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一級だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」などと言わしめました。

 本書は、企業の目的は「現在から将来にわたってお金を儲けることである」という命題を掲げ、その目的を達成するための合理的な思考プロセスを、生産管理の世界を舞台に解説を試みたものです。といっても難解なマネジメント書ではなく、機械メーカーを舞台に、スリリングといってもいい小説仕立てのストーリーが展開されます。

 物語は、工場長(主人公)のアレックスが、本社から突然、採算悪化を理由に工場閉鎖を告げられるところから始まります。1つの製品が完成するまでにはいくつもの工程がありますが、そのどこかにボトルネックがあると、工場全体の生産量はそのボトルネックの生産能力によって決まってしまいます。工場全体のアウトプットを上げるためには、そのボトルネック工程のアウトプットを最大限にすることが求められます。

 アレックスはまるで謎解きでもするかのように工場内のボトルネックを突き止め、全体最適化に向けて改善努力を重ねます。アレックスにTOC(Theory of Constraints=制約条件の理論)という、ボトルネックの原理と解決法を指南するのは大学時代の恩師ジョナですが、じつはこのジョナはゴールドラット博士の分身です。ちなみに、博士はトヨタ生産方式の生みの親として知られる大野耐一氏に直接教えを乞い、この理論を作り上げました。

 そしてTOCを単なる生産管理の理論から新しい会計手法や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと導き、さまざまな業界の、あらゆる問題解決に応用できる手法体系へと発展させたのです。