1960年代前半に日産自動車がタイで自動車製造を開始して以来、日本企業はタイが自動車製造大国として台頭する原動力となってきた。今は中国企業が、タイに電気自動車(EV)の時代をもたらそうとしている。日系自動車工場のある工業地帯からほど近い、タイ自動車製造業の集積地であるラヨーンの郊外で、中国最大のEVメーカー、比亜迪(BYD)が開発を進めている。専門家はこれが同国最大の自動車工場になるとみている。他にも複数の中国企業がすでにタイでEVを生産しているか、生産する意向を表明している。念頭にあるのは同国の内需と、自由貿易協定に基づく輸出ハブとしての役割だ。 中国の積極的なタイ進出は、世界のEV市場を掌握し、日本などの伝統的な自動車大国を押しのけたいという野心の表れだ。中国の自動車大手は世界各地に参入しており、国外に生産ラインを立ち上げて販売網を拡大し、販売台数を増やして各国で優遇措置を受ける狙いがある。