ツールや人脈を生かすために
起業家にもオンボーディングは大切

「スタートアップに役立つサービスは、AWSや会計クラウドなどさまざまなものがあり、キャピタリストも数多くいるが、こうしたツールや人脈をどのタイミングでどう使い、アクションを起こしていくかが難しい。起業家にもオンボーディング(環境に慣れるためのサポートのこと)は大切だ」と小原氏は語る。

「ベンチャーキャピタルなどが主催する招待制イベントに参加すれば“スタートアップ村”のインサイダーとして、VCのコミュニティに参加できるようになり、先輩起業家からの情報共有を得て、起業家としてのリテラシーは上がっていく。だが、そこへ招待されるのにまず、シード出資されていなければ声がかからない」(小原氏)

 StartPassでは、シードVCに投資してもらうことを参加する起業家の中間的なゴールとして設定している。スタートアップ村に起業家が入り、着実かつ急速に事業を拡大するためのツールとしては「起業家カルテ」を用意。それぞれの状況にフィットした形でキャピタリストやサービス、アクセラレータープログラムのサジェストを行う。

「StartPassにエントリーして成功体験をつくり、成功した起業家がほかの起業家から見たロールモデルになり、さらに集合知として情報がたまっていくエコシステムになれれば」と小原氏。「そのためにコストも十分にかけて運営を行っていく」と語る。

 後の出資とキャピタルゲインを想定し、相談は無償で行うという投資家もいる中で、月1万円とはいえ有償でサービスを行う理由のひとつに、このコストもあると小原氏はいう。

「5000米ドル分のAWSクレジットや、120万円相当のWantedlyのプランなど、スタートアップの起業家なら使うであろうサービスのチケットが手に入る経済合理性もある。『体験したから後日利用しなければならない』という出口があるわけではなく、起業家のコンディションによってあるものを使えばいいというサービスをそろえている。無料でなくすることで、熱量の高い人たちだけを集めたいという意図もある」(小原氏)

 また、エンジェル投資家としてこれまで無償で起業家からの相談を受けてきた経験から「継続的に高いクオリティでの相談を担保するためにも、プラットフォーマーとして継続してサービスを提供していくためにも、費用を負担してもらう形を取った」と小原氏は話している。

「米国でもアクセラレータープログラムに参加する起業家が費用を負担するという例もある。プチコンサルティングを月額5万円で提供する、といったものではなく、熱量が高ければ払える金額と考えて、価格設定は行った。良質なコミュニティとして、みんなで起業家として磨き合っていければ」(小原氏)