病院の再編・統合で「近所の病院がなくなる」?
多すぎる病院、多すぎる病床が招く医療資源の不足。
患者が求める医療へのニーズの変化と現状の医療提供体制とのミスマッチ。迫りくる超高齢時代への対応──。
日本の医療が抱えるさまざまな問題の解消を目的に、厚生労働省は近年、公立・公的病院を中心に「病院の再編・統合」を推進しています。
簡単に言えば「A病院とB病院を1つにして新たにC病院を開設する」というのが病院の再編統合の基本。
A、Bのどちらの病院も病床を100床ずつ持っているのなら、1つにまとめてCという大きな病院にすれば人材も設備も病床も集約され、150床に減らしても医療の質の向上や効率化を確保できるという考え方です。
医療資源(人材や設備)を“広く、薄く”散らばらせるのではなく、必要十分な数の病院に集約して“要所に、濃く”配置する。多すぎる病院を精査し、機能や役割を明確化して再編・統合することで、より“密度の濃い医療”の実現が可能になるのです。
また病院の再編・統合は地域医療構想の推進にも不可欠な取り組みと考えられています。
高齢化に伴って病院における病床機能のニーズは急性期から回復期、慢性期へと移ってきています。
ただ日本の病院は病院・病床数が一気に増えた1960年代以降につくられたものが多く、当時はまだ高齢化への懸念もなかったため、手術や治療で病気を治す「急性期中心の病院」がメインとなっています。
病院の再編・統合には、病院数を減らすことで急性期の病床を減らし、回復期や慢性期病床を増やす。さらには入院による医療から在宅医療へのシフトを進めるという狙いもあります。
現実問題として、ある程度の規模の地方都市は“病院城下町”などと呼ばれ、市立病院に県立病院、国立病院、済生会病院に日赤病院など多くの公立・公的病院がひしめいているのが現状です。
さらに病院の再編・統合には、国の財政を締め付けている医療費の拡大という大きな問題を解決するための施策という側面もあります。
医療費のなかでも大きな割合を占めているのが「入院費」です。
その入院費を削減するために多すぎる入院用ベッド(=病床)を減らす。そのために病床を抱えている病院自体の数を減らしていく。それが医療費の削減につながるというわけです。
地域医療構想の推進や医療費の削減効果などメリットが多い病院の再編・統合の動きは今後、より加速すると見られています。
ある日突然、町の小さな病院がなくなる。近所にあった病院が姿を消す。みなさんの身近にそんな事態が起きたとしても、決して不思議なことではないのです。