香港から「亡命」周庭さん、立命館大の学生に語った“2つの言葉”とは?ゼミに招いた教授が回顧メディアに向けて話す周庭さん(2019年) Photo:Anthony Kwan/gettyimages

香港で民主化運動を行い、「民主の女神」と呼ばれた周庭(アグネス・チョウ)さんが事実上の亡命宣言を行った。筆者はかつてアグネスさんと交流を持ち、主宰するゼミに招いて講演会を開いたこともある。アグネスさんの逮捕後に連絡は途絶え、今回の亡命宣言によって数年ぶりに近況を知ることとなったが、滞在中のカナダで「身の安全」を守れるのか――。本稿ではアグネスさんの先行きに思いを巡らせるとともに、逮捕前の来日時に語られた「本音」を明かしていく。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

アグネスさんをゼミに招き
講演会やディベートを開催

 香港で民主化運動を行っていた周庭(アグネス・チョウ)さんが12月3日にSNSを更新し、現在はカナダに留学中であることを明らかにした。投稿には「おそらく二度と香港には戻らない」という趣旨の記載もあり、「事実上の亡命」だとみられる。

 かつて「雨傘運動」と呼ばれる民主化運動に尽力していたアグネスさんは、2020年に香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕された。禁錮刑を課され、21年に出所した後はSNSなどの更新が止まり、動向が分からないままとなっていた。実際のところは、出所後も「定期的な出頭」を求められ、心身に不調を来していたという。

 報道によると、アグネスさんがカナダに留学したのは9月。留学自体は香港当局の許可を得ていたものの、12月に一時帰国する約束だったようだ。冒頭の亡命宣言は、それを反故(ほご)にするものだった。そのため香港警察の国家安全部門(以下「国安警察」)は、アグネスさんに対して「12月の予定日までに出頭しなければ、逃亡犯となり指名手配する」と怒り心頭だという。

香港から「亡命」周庭さん、立命館大の学生に語った“2つの言葉”とは?ゼミに招いた教授が回顧2016年12月、立命館大学政策科学部でのアグネス・チョウさんの講演(筆者撮影)

 そんなアグネスさんと筆者は、実はかつて交流を持っていた。逮捕前の15年から交流がスタートし、16年には筆者が運営する立命館大学政策科学部のゼミナール(上久保ゼミ)で講演してもらった。20年1月には香港と立命館大学をインターネットで接続し、オンラインでの講演会と、学生とのオンラインディベートを開催したこともある。

 オンライン講演会の模様は、現在も削除されずYouTube上に残されている。関心のある方はぜひご覧頂きたい。

Agnes Chow's Online Lecture in Japanese University (1)【上久保ゼミ 競争力養成プログラム】
Agnes Chow's Online Lecture in Japanese University (2)【上久保ゼミ 競争力養成プログラム】

 当時のアグネスさんは日本文化に詳しく、日本のアイドルが大好きだった。彼女と初めて会った時、語られた中で強く印象に残っている言葉が2つある(本連載第250回)。