北京五輪が開幕したが、新疆ウイグル、南モンゴル、香港などの人権侵害に対する抗議として、米国、英国などが政府首脳を五輪に派遣しない「外交ボイコット」を行った。それでも中国の状況は変わらないが、筆者の周りでは、日本の自由民主主義を学びたいという中国人学生が増えている。彼らは日本で何を得るのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
北京五輪開幕でも、中国の人権侵害はより悪化
この連載では、実質的な効果が何もない「外交ボイコット」ではなく、北京五輪を完全にボイコットして選手を派遣せず、IOCと中国に対して、五輪憲章に反するものとして、北京五輪自体の中止を求めよと主張した。
中国が人権状況の改善に取り組もうとしない場合や、人権侵害そのものを認めないような場合には、「経済関係」「国益」や「政治」にかかわらず、断固たる対応を取るべきだということだ(本連載第291回)。
中国の人権侵害、言論弾圧的な姿勢は、五輪に参加するアスリートたちにまで及んでいる。北京五輪大会組織委員会は「五輪精神に反するもの、とりわけ中国の法律や規則に違反する行動や発言は特定の処罰対象となる」と警告した。これもまた、アスリートの「自由な言論」を取り締まるためだと批判されている。
中国の法律は極めて曖昧で、中国に批判的な国のアスリートが、突然五輪参加資格を停止されるような事態も起きかねない。五輪に参加する各国は、アスリートを人質に取られたような状況だといっても過言ではない。到底、五輪を開催できるような状況ではない。
北京五輪はすでに始まってしまった。だが、アスリートたちが無事に競技に参加できるように、我々は中国の人権侵害、言論弾圧について厳しい視線を緩めるわけにはいかない。
しかし、米英など自由民主主義陣営が、どんなに人権侵害、言論弾圧を批判し、制裁措置を発動しようとも、中国は態度を改めることがない。まるで「逆切れ」するかのように、かたくなに人権侵害、言論弾圧を正当化し続けている。
事態は悪化する一方である。人権侵害、言論弾圧は絶対に認められないが、自由民主主義陣営は、中国に対して別のアプローチが必要かもしれない。私が中国人と直接対峙した経験をもとに、考えたい。