アグネスさんのように苦しむ
若者たちを減らしたい

 余談だが、大学教育の現場では「母国に帰りたくない」という中国・香港からの留学生が多い。修士論文の提出期限をわざと2回も3回も延長し、帰国を延ばそうとする中国人学生も増えている。卒業・修了後は「日本での就職」を希望する人も明らかに増えた。

 中国をより良い社会にしたいという思いで日本の民主主義を学んでいる留学生もいるが、明らかに「中国に帰りたくない」という動機で日本にとどまっている学生が一定数存在するのだ(第295回)。

 教育現場はそうした状況だが、中国が20年ほど前から「学生の海外留学」を認め始めたのは大きな進歩である。その結果、民主主義が何かを分かっている人も山ほど出てきている。

 だからこそ、筆者は未来への希望を捨ててはいない。中国は指導者が変われば体制もガラッと変わる国だ。習近平国家主席による現体制が続く限りは難しいが、開明的な指導者が現れた暁には、中国および香港が民主化に向けて前進すると信じたい。

 筆者や教育者にとって大事なのは、そのときに備えて、国籍を問わず「目の前の学生」に民主主義の在り方を説いていくことだ。アグネスさんのように苦しむ若者を減らすべく、今後もできるかぎりのことをやっていきたいと考えている。