新NISA 徹底活用#7Photo:Gina Pricope/gettyimages

お金を増やすには賢くなければならない。では具体的にどうすればいいのか。金融機関の甘言に厳しく対峙し、個人投資家へのアドバイスを送り続ける経済評論家の山崎元氏。特集『新NISA 徹底活用』(全15回)の#7では、その山崎氏が2024年からスタートする新NISAの賢い活用法を徹底指南する。(ダイヤモンド編集部 小栗正嗣)

「週刊ダイヤモンド」2023年11月4日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

大盤振る舞いとなった新NISAの正しい使い方
鍵は「長期でダメなものは、短期でもダメ」

 2024年からNISAの制度が大きく変わる。これまであった、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAが、一つの「NISA」になって、規模も使い勝手も大幅に改善される。結果的に、投資家にとって期待以上だと褒めていい出来映えだ。一方、金融・運用業界にとっては、金額的な規模が大きくなったことに加え、顧客1人が一つの金融機関にしかNISA口座を持てないので、無視できないビジネス機会だ。既に口座獲得の競争が熱を帯びている。

 さて、新しいNISAの制度趣旨と正しい使い方を理解する上で参考になるのが、これまでのNISA制度の変遷であり、特に18年に登場したつみたてNISAだ。

 つみたてNISAは、積み立て投資を標榜しながら12で割り切れない年間40万円という中途半端な金額の投資枠を持ち、しかも「長期の資産形成に適するもの」という条件で運用対象商品を金融庁が選ぶ奇妙な制度だ。

 この制度は、率直に言って、14年に導入されたNISA制度が、金融機関のあまりにもひどい営業(頻繁な売買や手数料の高い商品の勧誘など)に使われたことに対する金融庁の怒りから生まれた。もともとのNISAは、複雑なロールオーバーの仕組みを持つなど、将来の恒久化を意識して作られたはずだったが、金融機関の行儀が悪過ぎたのだ。

 金融庁は、つみたてNISAのような低コストの投資信託の積み立て投資による長期保有を「望ましい運用」だと考えている。一方、金融業界側では、投資できる金額が大きくなって顧客のお金が集まるなら、「つみたてNISA適格」の儲からない商品だけでなく、収益につながる商品を取り扱いたい。両者の意思とニーズの落としどころを探りつつ、さっぱり目玉のない岸田内閣の「新しい資本主義」の成果とすべく、金額も内容も大盤振る舞いをした結果が、今回の24年版NISAなのだ。

 だから、「つみたて投資枠」「成長投資枠」という二つの「枠」ができて、いささか複雑な制度がスタートすることになった。

 だが、新しいNISAの正しい使い方は難しくない。ヒントは、つみたてNISAにある。「長期の資産形成に適しないもの」は短期の運用でも検討に値しないからだ。人は、プロ・アマを問わず「いつ」がいいタイミングなのかを判断できない。つまり、中期や短期の運用でも「長期的に良いもの」を持つ以上のことができない。「長期でダメなものは、短期でもダメ」なのである。

 資産運用に関係ない制度の説明は金融庁のホームページを見ていただこう。新NISAの制度を、資産運用上のポイント「だけ」に絞って以下の6点にまとめた。

金額も内容も大盤振る舞いとなった2024年スタートの新NISA。つみたて投資枠と成長投資枠という二つの「枠」が用意されるなど、いささか複雑な制度だ。だが、資産運用上のポイントは6点に絞られる、と山崎氏はアドバイスする。