投資信託会社幹部のA氏とB氏が、運用業界の最新事情を明かす覆面座談会。特集『新NISA 徹底活用』(全15回)の#8はその後編である。日本の運用業界では「指数連動の正確さ」のみが社内外で評価され、その裏では「隠れコスト」も発生している。いよいよ壁にぶち当たったインデックス投信に「明日」はあるのか?(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)
>>前編『新NISAでインデックス投信の信託報酬引下げ競争勃発!運用業界の真の勝者は誰か?【運用会社幹部ぶっちゃけ覆面座談会・前編】』から読む
指数の動きにピッタリ合わせるのは難作業
これが絶対的な評価基準になっている弊害
――インデックス投信の運用は、指数に連動させるだけなので、比較的簡単だというイメージを持たれていると思います。実際のところはどうですか?
B パッシブ運用チームは結構面倒くさいことをやっていますよ。指数にぴったり合わせるように、それぞれの銘柄を売買しますし、設定・解約があればそれに応じた売買も発生します。
特にオールカントリーとか米株価指数を対象とした、まだ小さなファンドの運用は難しい。現物で買うよりもコストが安いので、先物でポジション取ったりする。
一方、日本国内を対象としたものは結構、時間制限がきつい。
A 日本国内運用ファンドは当日計上で、当日そのファンドを買いに来たお客さんには、注文日当日の基準価額が適用されます。
なので、追加の設定があったら、当日にその分の株を買うなり、エクスポージャーを取らないとファンドが薄まってしまう。
B 要は、ベンチマークとしている指数との乖離が出ちゃう。パッシブマネジャーとしては「トラッキングエラー(ベンチマークとの乖離)をなるべく出さない」が、社内評価の対象なので。
A インデックスファンド・マネジャーの評価は、やっぱりどこもトラッキングエラーでやっていますよね。「トラッキングエラーが少ない」が絶対的な評価基準になっている。
そのトラッキングエラーをなくすには、「引値ギャランティー取引」をします。運用会社とブローカー、証券会社が、あらかじめ契約した数量の株式を、その日の引値で引き渡すことにする取引のこと。要は、インデックスの動きに合わせてねと“お任せ”するわけです。
証券会社の方は、引値よりも安く仕入れた株式も、契約通り引値で引き渡すことができる。手数料とは別に小遣い稼ぎができる。
なんのことはない。ブローカーはもうかるからやる。もしかしたらブローカーが自ら買い上げたものを、高値で買わされているかもしれない。
インデックスの動きにピタッと追随しようとすると、そういった「隠れたコスト」が発生するということは、日本ではあまり知られていませんね。
日本の運用業界では「指数連動の正確さ」のみが社内外で評価され、国内運用では「隠れコスト」の発生も常態化している。日本のインデックス投信ビジネスは息苦しい組織風土を抱えたまま、活力を失っていってしまうのか、投資信託会社幹部のA氏とB氏がさらに語る。