ダイハツ、お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」があるダイハツ工業本社=21日、大阪府池田市 Photo:JIJI

「員数主義」に走っていたとしても
なぜこれほどダイハツは「堕ちた」のか

 不正問題で揺れるダイハツが、「ブラック企業」だと叩かれている。

 12月20日に第三者委員会の調査報告書で指摘された社風が、「そりゃ、不正がまん延するよ」「昔、在籍していたブラック企業がまさにこんな感じだった」などと、世間をドン引きさせているのだ。

 まず報告書によれば、ダイハツは「極度のプレッシャーに晒されて追い込まれた現場の担当者に問題の解決が委ねられた現場任せの状況になっていた」という。ぶっちゃけ、こういう「現場に丸投げ」はサラリーマンならば一度や二度は経験する「あるある」だが、ダイハツがすさまじいのはここからだ。

 現場が「これこれこういう問題でできません」と管理職にSOSを出しても、「『で?』と言われるだけで相談する意味がなく、問題点を報告しても『なんでそんな失敗したの』『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問するだけで、親身になって建設的な意見を出してくれるわけではない」(調査報告書より)というのだ。

 要するに、「どんな手を使っても結果を出すのがお前の仕事だろ」と言わんばかりに、ノルマと責任をすべて「下」に押し付ける、という威圧的マネジメントがまかり通っていた。「下」は、生きるためにやむなく不正行為に走ったというワケだ。

 ちなみに、これは筆者が本連載の中で、日本企業の「不正カルチャー」の原因だと繰り返し指摘してきた「員数主義」の典型的なケースだ。「員数」とは旧日本軍内で使われてた装備品や物資の数を示す言葉だ。

 軍隊内ではこの「員数」と帳簿上の数が合わないのは「あり得ない」ので、ダイハツのように「で?」「なんで数が合わないの」「どうするんだ」と詰問された。そこで、とにかく員数を合わせるため、他部隊から装備品を盗んだりする不正行為がまん延、現場レベルでは黙認されていたというのだ。

 そんな旧日本軍の「数の帳尻を合わせるためならば多少のインチキには目をつぶる」という「員数主義」が戦後、従軍経験者や軍需工場での勤務経験者を介して、日本の民間企業にも引き継がれて、現在に至るというのが筆者の考えだ。詳しくは、《ビッグモーター前社長の他人事発言が、東京裁判「元陸軍大将の釈明」と重なる理由》をお読みいただきたい。

 ただ、仮にダイハツが員数主義にむしばまれていたとしても、ここまで「ベタベタのブラック企業」になってしまったことは説明できない。日本最古の自動車メーカーであり、軽自動車国内新車販売台数17年連続トップの名門がなぜこんな「闇堕ち」してしまったのか。