ライターのレジーが著書『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)で言及するように、とくにビジネスパーソンには「他人との差別化を図ることで、周りを出し抜いて生き残らないといけない」という意識があり、さまざまなジャンルの情報を大雑把にでも手早くインプットしたいという事情があるわけだ。彼らにとって教養はある種のコミュニケーションツールであり、インプットを時短化することで、コミュニケーション時のアウトプットの持ち球を可能な限り増やしたいのである。
あらためて言及する必要はないと思うが、教養やビジネススキルは、手間をかけて積み重ねていくことで本来の価値を生み出す。しかし、「いろいろ話せる武器を持った状態にしておく」「頭のいい人だと思ってもらえるような引き出しを持った状態にしておく」「面接のために話題の本の内容を知った状態にしておく」という目的においては、10分でその本の内容がわかるのならば、すこぶるタイパがよいといえるだろう。
また、「消費に失敗したくない」というマインドが消費者にある。「せっかく読んでも必要な部分は1ページもなかった」「じっくり読んだけど自分には難しすぎてわからなかった」という読書経験を持つ者にとっては、何時間もかけて読んで身にならないという失敗をしたくないし、ましてや数千円出して買った本からまったく学ぶものがなかったら、消費したことへの後悔につながる。
そのようなリスクを考えた際に、時間も消費しすぎることなく、月々500円からサービスを利用できるのならば、タイパもコスパもいいといえるだろう。
(3)サビカラ
2021年12月からカラオケ機種JOYSOUNDで利用できるようになった、その名の通り楽曲の一番の盛り上がりといえる「サビ」だけを気持ちよく歌える新感覚のサービス。
消費するコンテンツは「おいしいところだけでいい」という考えが一般的になるなか、カラオケという娯楽でも「おいしいところ」だけが求められているのだ。
たしかに友達とカラオケに行って、そこまで知名度の高くない曲を歌っている最中に友達が携帯をいじっていたり、ドリンクバーのために席を立たれてしまうことはよくある。
一人カラオケを除けば、カラオケはコミュニケーション娯楽であり、ただただ盛り上がりの追求に特化するのであれば、サビだけを歌うということはタイパがいい選択なのかもしれない。