短期間での成功だけを願う若者は
恋愛も就職にもタイパ概念を持つ

 マッチングアプリ「Omiai」の会員を対象に行われた、マッチングアプリの使い方についての調査によると、Z世代(そのうちの18~25歳)は恋愛においてもタイパ意識が強く、同時に4人以上の相手と連絡をとっているという。

 一人と長くやりとりを続けるよりは、同時進行でやりとりを行い、そのなかから気の合う人を探し、効率よくデートにつなげて恋人関係に発展させていく傾向があるようだ。

 また、同調査では「マッチングアプリ内で出会った異性とデートに行く約束をするまでの日数」を聞いているが、Z世代は「1週間未満」が20%で最も高く、その他の世代と比べて圧倒的に短い結果となったという。

 マッチングアプリでは「メッセージのやりとりの多さ、期間の長さ」と「交際できる確率」に相関関係はなく、長期間のメッセージのやりとりが無駄になることも珍しくない。Z世代は簡潔なメッセージのやりとりを行い、問題ない相手と判断できたらすぐに実際に会い、短期間で交際するかを判断する傾向があるようだ。

就職先はマグロ漁船!カラオケはサビだけ…若者の「タイパ至上主義」はここまで来た『タイパの経済学』(幻冬舎新書) 廣瀬 涼著

 また、就職の際にもタイパ意識を持つ若者は少なくない。2023年4月2日の朝日新聞デジタルに掲載された「高級車に憧れて…新卒でいきなり遠洋漁船が急増 『頑張れば稼げる』」によれば、宮城県気仙沼市で海の上で長期生活を送るカツオやマグロの遠洋漁船での仕事を選ぶ若者が急増しており、前年度の4倍以上だったという。

 遠洋マグロ船の場合、10カ月間海に出て、帰港したら50~60日休みというパターンで、水揚げ次第では1年目でも年収500万円が可能だという。しかも、船に乗っている間は家賃や食費、光熱費がいらない。ちなみに厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、大卒者の平均年収は約226万円であった。

「頑張れば周りの同世代よりも多く稼げる」というのは仕事への十分すぎるモチベーションになるし、なにより、家賃や食費、光熱費がかからないのに、帰港したら50~60日の休みがもらえるのであれば、そこにタイパのよさを見出す者がいてもおかしくはない。

 恋愛にしても就職にしても、タイパの良し悪しを判断するのはあくまでもその当事者である。多様性が認められる社会へ前進しているからこそ、人生設計や将来のビジョンに対してタイパの概念を持ち出す者が現れても不思議ではない。