進撃の日本製鉄#11月12日、記者会見で握手を交わす日本製鉄の今井正次期社長(右)と橋本英二次期会長 Photo:JIJI

大躍進を遂げてきた日本製鉄の社長が交代する。希代のカリスマとして日鉄をけん引してきた橋本英二社長は「会長CEO」に、後任の今井正副社長は「社長COO」に就任する。久しく使われてこなかったCEOやCOOという役職が復活したのはなぜか。特集『進撃の日本製鉄』の#1では、「橋本・今井新体制」の思惑に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

10年ぶりにCEO、COOが復活
橋本氏の強いリーダーシップ継続

 今年1月12日、国内最大手の鉄鋼メーカーである日本製鉄(日鉄)が社長交代を発表した。2019年から5年にわたって躍進を支えてきた橋本英二社長の後を継ぐのは、副社長の今井正氏だ。

 東京大学大学院で金属工学を専攻していた今井副社長は、旧新日本製鐵(新日鐵)出身者で初の「技術系社長」として注目を浴びた。

 実は、今回のトップ人事には、もう一つ“異例”な点がある。橋本社長は4月1日付で会長兼CEO(Chief Executive Officer、最高経営責任者)となり、今井副社長は社長兼COO(Chief Operating Officer、最高執行責任者)となるのだ。日鉄のトップ人事でCEOやCOOの肩書が用いられるのは約10年ぶりで、極めてまれだ。

 久しく使われてこなかったCEOやCOOが復活したのは、いったいなぜなのだろうか。

 次ページでは、「橋本政権」がこれまで成し遂げてきたことを振り返りながら、日鉄グループの幹部や社員、業界関係者らへの取材から浮かび上がってきた新体制の「本当の狙い」を明らかにする。