もちろん、私は今『週刊文春』とは無関係の人間なので、証言者について記事以上の情報は持っていません。しかし、過去の経験から言えば、たとえば「招待されたホテルと同じ部屋を借りて、証言が具体的に一致するか」といった証言者の過去も含めて、徹底的に取材するのが週刊誌の通例です。真実相当性を確保するにも、そういうディテールに間違いがあってはならないからです。
松本氏にとって厳しい闘争に
「報じる側」の覚悟も必要
以上、私の見立てでは、松本氏にとって相当厳しい裁判闘争になることは確実と思えます。
私は、先輩のビートたけし氏らが言うように、もし報道が真実だとしたら、松本氏は全被害者に対して謝罪あるいは賠償を行う、もしくは島田紳助氏のように引退する、といった選択をするほうが、家族やファンを悲しませずに済むと思います。
最後に、テレビ局に対しても申し上げたいことがあります。ジャニーズ問題を報じなかったことを、大勢のMCや社長が謝罪、反省しました。今回の松本氏の問題はジャニーズ問題とそっくりです。
テレビは旧ジャニーズ事務所と同様、松本氏とそのグループおよび吉本興業に依存しています。そして文春の連載記事は、芸能人としての影響力を利用して女性との交渉を迫るという告発でした。まさにジャニーズ問題と同じ構図です。
あのときの反省が本当なら、彼らは独自でこの問題を調査し、報道する努力をすべきではないでしょうか。残念ながら、それをしているテレビ局も新聞もありません。中には、わざと文春に否定的なコメンテーターや弁護士を並べて、吉本寄りのコメントをしゃべらせているように見える番組もあります。やはりこの状況は、全然反省がなかったことを意味しています。
ジャニーズ問題が起こったとき、私はかつての「一億総懺悔」と同じことになると言いましたが、やはりその通りになったようです。今回はどうでしょうか。
(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)
1ページ6段落目:「松本氏は大阪・関西万博のアンバサダーという公職を勤め、税金でその謝礼をもらっています。」→「税金でその謝礼をもらっています。」を削除。
(2024年1月26日20:30 ダイヤモンド・ライフ編集部)