写真:北陸電力の志賀原子力発電所北陸電力の志賀原子力発電所(1月2日撮影) Photo:JIJI

能登半島地震を巡って、原子力発電所に関するデマがいくつもはびこっている。事実誤認が判明しても撤回・訂正されることは少なく、かつて首相の立場にあった鳩山由紀夫氏まで、そんなデタラメな状況に拍車をかけている。そこで特にひどい五つのデマについて、事実関係を丁寧にひもときたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

なぜ原発に関する報道や主張は
事実誤認が訂正されないのか?

 1月1日16時10分ごろに能登半島で起きた大地震。被災地に立地していた、北陸電力の志賀(「しか」と読む)原子力発電所を巡っては、安全性が確保されているにもかかわらず、案の定、デマが駆け巡った。そして残念なことに、原発を巡る報道や主張では、事実誤認が混じっていても大きな問題とされることはない。

 とにかく、間違ったことでも言いたい放題で、その後まったく事実と異なったことが判明しても訂正されることは少ない。もはや治外法権のようなありさまだ。今回、特にひどかった五つの誤報について、事実関係を丁寧にひもといていこうと思う。

 私は、能登地震の発災直後に、志賀原発のある志賀町(しかまち)、そして、志賀原発の入り口付近まで、志賀町の住民と訪れている。原発の敷地の中まで立ち入ることはできなかったが、その町民は「志賀町は震災では一番大きい震度7を記録したものの、死亡者はたったの2人だった。地盤が良かったのだろう。原発は大丈夫そうだが、実態はよく分からない。むしろ、原発周辺の風力発電が止まっているのが不思議だ。今後の復興のためにも、電気代は安い方がいいので早く動かしてほしい」と言っていた。

 実際に、1月24日14時時点の震災による被害状況は、石川県で233人の死亡が確認されているが、志賀町では2人。安否不明者(1月23日14時時点)は19人いるが、志賀町はゼロだ。しかし、最大震度は、石川県七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町で6強、石川県中能登町、能登町、新潟県長岡市で6弱だったのに対し、志賀町は7を記録している。

 志賀町は震度が大きかった割に被害が小さくて済んでいる。その意味で、志賀原発の立地は適切だったといえる。

 それでは、今回の能登地震を巡って巻き起こった誤報、デマを見ていこう。